第3話 ハウスメーカー
スキル。
それは生まれた時に神から与えられる力とされる。
この力はその力を使うように念じれば身体がそれにそって動いたり、力を使う時に後押しをしてくれるものだ。
【剣技】のスキルを持つ者は剣術を習得する速度があがったり、剣術を使う際に想像通りに動かせるようになったりする。
【火魔法適性】のスキルを持つ者は、火魔法を使うと威力が上がったり、火魔法の習得が早くなったりする。
珍しい所だと、【鑑定】スキルがあれば、物品を鑑定し、それをどのような物かわかったり、品質の善し悪しが分かる。
他にもそれスキルなんですの? と思うようなスキルが色々とある。
というか、その色々のスキルの中で、わたくしの【ハウスメーカー】は正直よくわからないものだ。
いや、だった。
「【ハウスメーカー】って、どんなスキルなの? 前の時は『よくわかりませんわ』って言っていた気がするけど」
「よくわかりませんわ!」
「わからないんだ……」
「だってわからないんですもの……でも、異世界の知識を入れた今なら、少しは分かります!」
「おお! 本当に!? 何ができるの!?」
「お家を作ることが出来ますわ!」
「本当!? それはすごいよ!」
「でしょう!」
「早速作ってみせて!? 僕、温かい暖炉の前のフカフカなベッドで寝たいな!」
「ちょっと求めすぎですわ? いきなりそんな高レベルそうなのを作ることはできませんことよ?」
数日前までなにこのスキル? お優雅じゃなさそうだから使うの止めておきますわ。
ということを思って放置していたのでそんなすぐに使える訳がない。
「そっか……でも、雨を防げるだけでも大きいよね」
「そうなのです。なので、早速やってみましょう。そろそろ野営をしてもいい時間でしょうし」
「だね。王都からも多少離れることができたから、やってもいいと思う」
「では早速!」
わたくしは異世界のお家の知識を想像し、それを作れるようにしてスキルを使う。
「【ハウスメーカー】!」
わたくしがスキル名を叫ぶと、目の前にウインドウが浮かび上がる。
「これは……なんですの?」
そのウインドウは異世界で言うステータスのようなもので、そこには文字が羅列していた。
・設計
・加工
・建築
・倉庫
・解体
という5つだ。
「まぁ……お家を建てるには建築ですわよね。【建築】!」
わたくしがスキルを選んで叫ぶと、目の前に家が出来上がる。
茶色い1m四方の立方体が縦3段、横4段、奥4段積み重なる。
そして当然わたくしたちの目の前と中身はあいている。
「これ……ただの土の塊ではないか?」
ティエラの言葉に、わたくしは答える。
「これが有名なお豆腐ハウスの完成ですわ」
【建築】スキルを使うだけであら不思議、マ〇ンク〇フトで誰もが最初に作る由緒正しいお家が目の前に。
土を重ねて作っただけだけれど、皆最初はそれで夜を過ごしたものだ。
「あ、でも明かりがないのでゾンビが出てくるかもしれません」
「ゾンビなんか墓地でもないんだから早々出てこないよ」
「そうなんですのね。なら早速入りましょう」
中は4m四方の空間があり、入り口は縦2m、横1mの入り口がある。
「とっても素敵ですわね!」
「俺には狭い」
「僕もちょっとこの姿勢はきついかな」
4m四方と言っても、ティエラはそれなりに大柄だし、マーレに至っては3m近くある。
だから3人が入ると正直何も見えないくらいだ。
「まぁ……申し訳ありません。すぐに新しいお豆腐ハウスを作りますわ」
「別にお豆腐ハウスにこだわらなくてもいいんだよ?」
「でも最初はこうやるのがお優雅なしきたりと聞いていましたが……」
「そんなのはないと思うけど」
「そうなんですのね。ならせめてもうちょっと大きく作りますわ。それに、他にもスキルがあるので、色々と試してみなければ」
まだ使ったのは建築のみ、設計と倉庫に加工、解体……はいいけれど、使ってみなければ。
「【設計】!」
わたくしが叫ぶけれど、何も起こらない。
「【倉庫】! 【加工】!」
だが何も起きない。
……泣きそうだった。
スキルが5つもあると思って素晴らしいと思っていたのに、全く機能していない。
「今のはスキル?」
「ええ、そうですわ。でも、3つは発動しませんの……」
「なら、ちゃんとした使い方を理解しないといけないかもね」
「理解?」
マーレの言葉に、わたくしはぼんやりと答える。
ちょっと夜更かししているせいか疲れが出てきたかもしれない。
「そう。スキルって言っても、神様が役に立つようにくれたもので、最初から使い方がわかっていることって少なかったんだよね。だから、ゆっくりと言葉の意味を理解して、使える様になって行けばいいよ」
「ありがとうございます。そうですね。今はあまり使えなくても、いずれ……」
「うん」
「一緒に色んなことがしたいですわ」
「僕もだよ」
「俺も」
「ええ」
わたくしはそう答えて、疲れからかそのまま倒れてしまった。
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