第28話 完成

「それでは許可ももらいましたし、早速作っていきますわ!」

「おう!」

「やるよー!」


 わたくしが考えたやりたいことの許可をマーガレットさんからもらった。

 それに、そのやりたいことに関して手伝ってもらえることになった。


「ですが、マーガレットさんたちのことは最後にやります。なので、まずはこの木の骨組みを使って、木造の倉庫を建てますわ」

「レンガじゃないの?」

「もちろんそれも作りますわ。でもまずは中を木で作り、外をレンガで覆うのです。これなら雨漏りをする心配はほとんどなくなりますし、万が一のことがあっても、木の壁がはばんでくれます」

「なるほど、でもそれだと、時間がかかりすぎない?」

「手工業ギルドでレンガや目地材(レンガ同士を繋げる素材)を購入しましたので、問題はありませんわ」

「流石クレアだ」

「ええ、ということで、マーレにも手伝ってもらいますわ」

「何をしたらいいの?」

「俺は? 俺は何をしたらいいんだ?」


 ということで、わたくしはティエラとマーレにやって欲しいことを頼んでいく。


「任せておけ!」

「のんびりとやっていくよー」


 2人はそう言ってくれて、わたくしは任せてわたくしにしかできないことをやっていく。


 それで早速倉庫の新築が始まった。



 わたくしたちが作り始めて3日。

 倉庫は想像通りに出来ていた。


 外側のレンガも全て出来ているし、ちゃんと【設計】スキルでも安全確認は何度もしている。


 しかも、こだわりポイントはそこだけではない。

 中にも少し……というか、フィーネが喜ぶような細工がしてある。

 そのために、ちょっと無駄な……いや、無駄ではないのだけれど、余計なことをしてしまっている。

 ちゃんとマーガレットさんの許可はとったけれど、わたくしの我がままではあるのだ。


「でも、良くあそこまでやったよね」

「そうだな。魔力が多いとはいえ、心配したぞ」


 マーレとティエラはそう言ってくる。


 しかし、わたくしにとっては造作もない。


「わたくし、最近あれだけ付与魔法を練習いたしましたからね。なんとかなっているのですわ」

「それこそ鬼気迫る顔で練習してたもんね。硬化の付与魔法で強度に関してもやっていたし、クレア、すごかったよ」

「マーレが色々と教えてくれたからというのもありますわ。わたくし1人では出来ませんでしたことよ?」

「それでも、すごくやっていたのはすごいよ」

「楽しかったということもあるのですわ」

「それは最高だね」


 そんなことを話していると、お店の店員さん、7割くらいエルフの人たち。

 彼女たちがワクワクした顔でわたくしに寄ってくる。


「あの、もう……中って入ってみてもいいの?」

「ええ、問題ありませんわ」

「ありがとう! それじゃあ見てくるね!」


 彼女がそう言ったのを皮きりに、皆新しい倉庫に入っていく。


 でも、そこにはわたくしが喜んで欲しいと思っていたフィーネさんがいない。


「大丈夫でしょうか……」


 そう思って彼女を待っていても、全く来る様子がない。


 わたくしが待っていると、倉庫から数人が出てきた。

 その中の1人、エルフの少女がわたくしに詰め寄る。


「ねぇ! あなたこれ本当に3人だけで作ったの!?」

「え? ええ、そうですわ」

「すごいよ! まさか……あんなになっているなんて、想像もして無かった! それに、細かい所に色々と付与魔法かけてあるよね!? すごすぎてビックリだよ! 言葉もでないよ!」

「本当ですか? そう言っていただけるとありがたいですわ」


 わたくしの言葉に、彼女は興奮冷めやらぬ感じでさらに言い募る。


「もうすごいよ! そんな冷静なんて超優雅じゃん!」

「! それは本当ですの!?」

「え、うん。すごい優雅だなって思うよ」

「ふふ、これでも優雅さに関しては自信がありましてよ」

「そうなんだ。やっぱりその優雅さがあった方がそうやって素敵になれるの?」

「素敵だなんて……そんなこと言っても何も出ませんわよ」


 わたくしたちはそんなことを話し続けていく。

 でも、心の奥には彼女の存在が消えない。


 そう思っていると、ティエラがわたくしの右脇から頭を出す。


「わ、すっごく綺麗な狼の魔物だね」

「ええ、ティエラという家族ですわ。しかし、一体どうなさったのですか?」


 わたくしが聞くと、ティエラはわたくしではなく、目の前の彼女に話しかける。


「一つ聞きたいことがある」

「私に? なに?」

「フィーネという少女がいるだろう? そやつの家を知らないか?」

「フィーネの? どうして?」

「このクレアはそ奴のために中をわざわざあのようにしたのだ。それなのに、姿を表さないから心配している」

「あーなるほどね。それで中をあんな感じにしてくれたんだ。手間かかるのにすごいなって思ってたけど、そういうことか」


 彼女は1人でうんうんと頷いている。


「それで、家は知らないか?」

「知ってるよ。ここまでやってくれたんだからね。こっちだよ」


 それから、わたくしたちはフィーネさんの家に案内してもらった。


「ここの4階の部屋だから! 私は帰るね!」


 わたくしは……フィーネさんの部屋を目指して、進む。

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