第18話 魔女の屋敷

「この町の北西には、平原の中にポツンと要塞のような屋敷が建っております。そこにはなんでも願いを叶えてくれる魔女が住んでいると言われています。ただ怪しい噂ですので、この町の者は皆寄り付きません」


「なんでも願いを……なるほど、その魔女に刻印をしてもらったのか。町長、有力な話、感謝する。俺の企みのせいでこの町に迷惑をかけたことは、いつか必ず詫びをすると約束しよう」

 シャルル殿下はそう言って席を立ったので、私も慌てて立ち上がる。


「た、企み……ですか? いえ、迷惑だなんてそんな……。まさか魔女の屋敷に行かれるのですか?」

 おどおどする町長。殿下はこくんと頷く。

「この国にそのような怪しい者がいるのであれば、一度見極めをせねばならんしな。どのみち行かねばならない」


「あぁ、どうかお気を付けください殿下。その屋敷に出かけて戻って来ない者もたくさんおりますので……」


 そう不安そうな表情を浮かべる町長を「心配するな」と慰めると、殿下は私を連れて町長の家を後にした。


 そして町の西門から平原へと出ると、ファフニールに乗って早速その屋敷へと向かった。


⸺⸺魔女の屋敷⸺⸺


 高い城壁に囲まれた中に、つたの這う大きな屋敷と綺麗に手入れをされた立派な菜園広がっていた。

 外から見る要塞のような雰囲気とは一変して、中の風景はのどかな秘密の隠れ家の様な、そんな雰囲気だった。


 シャルル殿下が入り口のベルを鳴らすと扉が独りでにゆっくりと開いたため、慎重に中へと入る。

 玄関を通って大理石の広間へと出ると、顔までフードにすっぽりと隠れた黒いローブの人が私たちを出迎えた。


「お願いがあって来たの……?」

 そのローブは、私よりも幼いくらいの少女の声でそう尋ねてきた。魔女って……少女なの!?

 その声を聞いてファフニールは驚いた表情を浮かべている。

『その声はまさか……いや、そんなはずはないか……』

「どうしたの?」

 彼にそう尋ねるが『いや、おそらく勘違いだ』と口をつぐんでしまった。


「いや、お願いではない。確認で来た」

 と、シャルル殿下。

「確認……? なんの?」

「4年前、聖女と名乗る人物に“勇者の痣”を施したのはお前か?」

「! ……そう、あなた、私を殺しに来たのね……!」

 ローブの少女は怯えたようにそう言うと、ローブをなびかせながらどんどん魔力を解放していく。


「違う。俺らはお前を殺しに来たのではない!」

 シャルル殿下はそう言いながらも私を自身の背中に収め、剣を引き抜いて構えた。

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