第3話 婚約と4年後の約束
「お前が? 冗談だろ」
「へ……?」
「!?」
シャルル殿下の冷たく言い放ったその一言に、誰もが凍りついた。
「失礼ですがシャルル殿下、ワシの孫娘は正真正銘の聖女です! いくら国の王太子様と言えど、ウチの孫の侮辱をするのはやめていただきたい!」
そう怒る村長に、シャルル殿下は相変わらず冷ややかな視線を送っていた。
「……そこまで言うのならその娘と婚約をしよう。おい娘、年はいくつだ」
婚約。セイラとシャルル殿下が婚約……。なぜだか、全く関係のない私の胸がズキンと痛むのを感じた。
「えっと、婚約は……その……」
そう言う村長の言葉を遮るように、セイラは「14歳です!」と元気良く答えた。
「ならば18になるまでに、聖女の
「大丈夫です! 必ず聖女になってあなたのお迎えを待ちますので!」
「なら決定だな。後日正式にこの村に婚約書を送らせてもらう。では俺は城へ帰る。おい、そこの娘。村の出口まで送れ」
シャルル殿下はそう言って空気になっていた私を指名した。
「なっ、ジェニー? 何でここに……。シャルル殿下ぁ。あたしが出口までお送りしますよぅ」
セイラがくねくねしながらシャルル殿下へと迫るが、彼は触れられる前にサッと避けた。
「うるさい。俺はそこの娘に依頼をした。おい娘、早くしろ」
「……はい」
私は訳もわからないまま、再びシャルル殿下と並んで歩き、村の出口まで向かった。
出口へ着くと、シャルル殿下は周りに誰も居ないのを確認して私に優しいトーンでこう尋ねてきた。
「お前、名前と年は?」
あれ、何だろう、さっきの村長の家に居た時の冷たい雰囲気とは全然違って、優しい感じ……。
「あっ、あの、ジェニーです。年は、セイラと同じ14です……」
恥ずかしくなって、思わずうつむいた。
「そうか、あれと同じなのは好都合だ。ジェニー、俺の目を見ろ」
「っ!?」
その言葉に驚いて顔を上げると、真剣な表情のシャルル殿下の顔が近くにあった。
「4年後、迎えに来る。それまでどうか、誰とも結婚をせず待っていてくれ。頼む」
「えっ、それってどういう……!?」
「今は多くは語れない。だが、俺は、俺のこの直感を信じている……。ではジェニー、また会おう」
シャルル殿下はそう言って背を向けると、村の外れに待機させていた馬に乗って去っていった。
今の、何だったんだろう……。まるでプロポーズの様な……!?
でも、シャルル殿下はセイラと婚約して、しかもこんなブスの私にそんなプロポーズなんて、たとえ天地がひっくり返ってもありえない。
あんまり深く考えないようにしよう。そう思うのに、私の胸はドキドキと高鳴って、いつまで経っても収まりそうになかった。
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