第4話 邪竜の封印

 シャルル殿下が村を去って1ヶ月ほどでシャルル殿下とセイラの正式な婚約書が村長のもとへと届く。

 これでもうセイラ側からの一方的な破棄は出来ないようなもの。

 セイラが大喜びする一方で、村の大人たちはひどく落胆していた。セイラが王太子に嫁ぐために村を離れてしまっては長寿の水を採取出来なくなってしまうと考えていたからだ。


 セイラは婚約書が届くとすぐに“聖域”と呼ばれる場所へと向かった。そこは聖域の巫女と呼ばれる人らにより、勇者や聖女の認定の行われる聖なる場所。王国によって厳重に保護されており、国の許可なしに立ち入ることは出来ないと聞いたことがある。


 セイラの場合は婚約書と一緒に通行許可証が入っていたため、それで聖域へと入る事ができる。ここまでくると、彼女は本当に特別なんだと思わされた。


 それから2ヶ月して、セイラは胸元に青色のあざを発言させて村へと戻って来た。その痣はシャルル殿下の手の甲にあったものとよく似ていて、やはり本当に聖女だったんだと、村中の大人が彼女を祝福した。


 それと同時に、村人らのセイラを渡したくないという想いが一気に膨れ上がった。


⸺⸺2ヶ月前⸺⸺


 今から2ヶ月前、セイラがシャルル殿下と婚約を交わしてから後1ヶ月で4年になるという頃。

 深夜に大人たちが集まって火山へと向かったので、こっそり尾行をした。


 すると、火山洞窟の最奥に護符がベタベタに貼ってある不気味な壺があり、大人たちは皆でその護符を剥がし始めたのだ。

 やがて全ての護符を剥がし終え壺の蓋を開けると、壺から黒い煙がシューシューと噴き出した。その煙はみるみるうちに竜の形を象っていき、目の前に真っ黒の巨大な竜が現れたのであった。


 その途端に村人たちが一目散に逃げ出してきたので、私も彼らに見つからないうちに村へと帰った。

 あんな竜の封印を解いてしまってどうするつもりなんだろう。

 それが分かったのは今から1ヶ月前の事だった。


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