第23話 セイラの現在
アンジェリカは意地悪そうにこう言った。
「実はセイラには……“若く見える魔法”をかけているの」
「えっ!? って事はセイラの寿命も吸い取って……?」
私はアンジェリカの呪いの話を思い出してそう尋ねる。
「ううん、今回は寿命を吸い取ったんじゃなくて、若さを吸い取ったの。ほら、私の噂を聞きつけて願いを叶えてもらおうとする人が来るでしょ? 私はね、その見返りにこっそり若さをもらっているのよ」
「そうか、アンジェリカは寿命が延びたとは言え、老いを防ぐ事はできないのだな」
と、シャルル殿下。
「そうなの。だからそう言う他力本願な欲深い人間から若さをもらって、若い姿を維持してるのよ。それで、相手に気付かれないように相手には若く見える魔法をかけて誤魔化しているの」
「じゃぁセイラの今の本当の姿は……よぼよぼのおばあちゃん?」
「そう言う事。私が彼女に解除の魔法をかければそれも解ける。シャルル殿下の口調からして、セイラはジェニーに意地悪してたんでしょ?」
「何で、分かるんですか?」
「簡単よ。彼、一度も“セイラ”って言わないもの。あなたの事は何度もジェニーって言ってるのに」
「あっ……」
確かに今までのシャルル殿下の言葉を振り返ってみると、セイラの事は“あの女”とかって呼び方してるような気がする……。
殿下の方を見ると、彼は静かにふっと笑った。
「ねぇ、シャルル殿下。セイラはこのままにしておくつもりはないんでしょう? だったら、その時は私に任せてちょうだい。あの子を絶望に突き落としてあげるわ」
アンジェリカは不敵に微笑んだ。なんだか私……とんでもなく強力な味方が出来た気がする……。
「分かった。その時は頼む」
シャルル殿下もそう言って、意地悪く微笑んだ。
⸺⸺
それから私たちはアンジェリカの屋敷で聖域に行く準備を整え、一泊させてもらった。
その翌日。
「じゃぁ私はあなたたちが聖女の
「ありがとう。アンジェリカさん」
「あなたは私の主人なのだから……アンって、呼んでちょうだい」
アンジェリカは優しく微笑む。
「ありがとう、アン。行ってきます」
「ええ、行ってらっしゃい」
シャルル殿下に抱えられて巨竜になったファフニールに飛び乗り、聖域に向かって飛び立つのであった。
「私も同じ。ローランとは会った瞬間から愛し合ったもの。だから、あなたは何もおかしくなんかないのよ。もっと深く愛してあげてね」
飛び立った私たちを見て、アンジェリカはそうポツンと独り呟いていたのであった。
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