第24話 聖女の禊

⸺⸺聖域⸺⸺


 聖域のある山脈は凶暴な魔物がたくさんいるって言ってたけど、ファフニールで飛んでいったため、そんな危険は皆無であった。


「ここが聖域だ。神聖な雰囲気の場所だろう?」

「本当……。不思議な空気……」


 森の開けた場所に真っ白な宮殿が建っており、その周辺には他の空気とは違う、エッケ村の長寿の水と同じような魔力を感じた。


 宮殿に入ると、数人の巫女さんに出迎えられる。

「勇者シャルル。お帰りなさいませ」


「あぁ、ただいま。聖女の痣を発現させたジェニーと言う女性を連れてきた。聖女のみそぎをお願いしたい」

 シャルル殿下はそう言って私の背中を軽く押す。

「かしこまりました。ジェニー様、こちらへどうぞ」

「はい、よろしくお願いします」

 私は巫女さんの一人に導かれるままに宮殿の奥へと付いていった。


⸺⸺禊の間⸺⸺


 そこは、広い大浴場のような場所だった。事前にアンジェリカから説明を受けており、その通りに事が進んでいく。

 まず服を全部脱いですっぽんぽんになる。巫女さんは全員女性だけど、ちょっと恥ずかしい。

 ちなみに勇者の禊にはちゃんと男性の付添人がいるらしい。


 そして温泉みたいにまずは身体を綺麗に洗う。その石鹸からも何か清らかな魔力を感じて、それだけでもう禊が終わったような気もするが、本番はこれから。

 その不思議な石鹸の花のような良い匂いに包まれて、禊の水へと入っていく。その水は温水プールのような温かさで、水風呂地獄ではなくむしろ心地が良い。


 張られた水の中央付近までチャプチャプと進み、腰を下ろして肩まですくむ。

 すると、私の太ももにある赤い花の痣がほんのりと淡い光を放ち、その光に呼応するように水面全体も光り始める。


「うわぁぁ、綺麗……」

 思わずその神秘的な光景に見惚れてしまう。しかしそれは周りで見ていた巫女さんも同じようで、皆うっとりしながら私の禊を見守ってくれていた。


 やがて光が収まると、恥ずかしいけど太ももを覗き込んで見る。赤かった花の痣は、緑色へと変わっていた。これで禊は無事終了だ。

 巫女さんに痣を確認してもらい、正式に禊が終わった事を認めてもらった。


 用意してもらったガウンを羽織り、その足でシャルル殿下の待つ個室へと向かう。

 ドクドクと激しく高鳴る心臓。私はある決意をして彼のもとへと向かっている。


 そして。


⸺⸺コンコン。


 シャルル殿下の返事を確認して中へと入る。

「無事禊が終わりました……」

「そうか、お疲れさ……まっ!?」

 彼は私を見た瞬間目を大きく見開き、顔を真っ赤にして呼吸を荒くしていた。


⸺⸺禊が終わった直後の聖女は、勇者を虜にするフェロモンを出している。

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