第25話 繋がる想い

「ジェニー! 待ってくれ、それ以上こちらへ来るな……!」

 シャルル殿下はまるで裸の私でも見ているかのような、そんな反応を示す。


「ううん、シャル。私、あなたの側に行くね」

「ちょっ!? 本当にダメだ。俺、なんかおかしいんだ……! お前を見ていると……」


「おかしくなんかないよ。あのね、シャル。アンがこっそり教えてくれたんだけど、禊を済ませた直後の聖女は勇者を虜にするフェロモンを出すんだって」

「なっ!? お前は……それを知ってて来たのか!?」

「うん、だってね、私……」


 私はアンジェリカの屋敷でシャルル殿下が“愛している”と言ってくれた事を思い出す。

 会ったばかりでおかしいかもしれないと彼は言っていたけど、それは私も同じ。


 火山洞窟で私を待っていてくれた事や、初めての町で色んなところに連れていってくれた事。それに街道を何時間も一緒に歩いて転生の話や色んな話をした事。


 その数日の出来事は、運命によって引き寄せられた2人の時間を埋めるには十分だと思った。


「だって、私も……シャルを愛しているから」

 そう言って彼に抱き着き、胸元に顔を埋める。

「っ!?」

 私の鼓動だって同じだけど、彼の鼓動は弾けそうなくらいにドクドクと波打っていた。


「……覚悟、出来ているんだな?」

 彼は自らの興奮を抑えるように、静かに尋ねてきた。

「アンが予め教えてくれたのは、もし嫌だったら禊が終わった直後にシャルの部屋に行かないようにって言う警告のつもりで教えてくれたの。でも私……私はシャルと……」

「ジェニー、一つだけ、一つだけ言い訳させてくれ」


「言い訳?」

「こんなフェロモンなんかなくても、俺はお前を愛しているし、抱きたいと……思っていた……」

「あっ……」

 ベッドにそっと押し倒され、唇が重なる。それは火山洞窟で初めてキスした時よりもずっと深く、ずっと幸せだった。


 着ていたはずのガウンはあっという間にどこかへ消え去り、この日私はシャルル殿下に初めてを捧げた。


⸺⸺


 翌日、私たちは巫女さんの案内で宮殿内を隈なく案内される。これから定期的に祈りを捧げに来る場所で、第二の家ともなるからである。

 それから私の希望で、シャルル殿下に連れられて、聖域の外の魔物がどれほど凶暴かを一緒に確認した。平原にいた魔物なんて可愛い赤ちゃんかと思えるくらいに大きくて禍々しい雰囲気を感じた。きっとセイラが用心棒を雇えたところで、辿り着けるものではなかったのではないかと思う。


 数日宮殿での暮らしを堪能すると、私たちはファフニールに乗ってアンジェリカの屋敷へと戻った。


 

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