第14話 セイラの謎

「でもセイラは……どうやってあのあざを付けてきたんだろう? 聖域、行ったんじゃないのかな?」

 首を傾げ、シャルル殿下に問う。


「それについてなんだが……俺が4年前あの女に聖域に行けと言ったのは、実は不可能に近い理不尽な言いつけだったんだ」

「えっ!? ど、どういう……」


「ジェニーも村の外に出て実際に魔物をその目で見ただろう。聖域のある山脈は、あんな雑魚とは段違いの凶暴な魔物の巣窟なんだ。戦えない14歳の少女がとても一人で行けるようなところではない」

「シャルは……最初からセイラを聖域に行かせるつもりがなかった……?」

 彼はうんと頷く。


「せいぜい行けて街道の終点の町である『サンクの町』までだ。そこから聖域までは結界のある安全な道が全く無い。だから、諦めて帰ってくるかと思っていた。それで18になってお前に痣が発現して、お前を連れ帰ってそれで済ませるつもりだったんだ」


「でもセイラは痣を偽装して、聖域に行ってきたと言い張った……」

「そうだ。それはもう紛れもない“偽聖女罪”だ。あの女だけではなく村人らも欲にまみれたクズどもだった。だから俺は、穏便に済ませるのを止めた。あの女がどうやって痣を付けたのか。誰に協力をさせたのか。俺はそれを暴いてやろうと思う」


「セイラに協力をした人がいるって事?」

「俺はそう考えている。あの痣は物理的に彫ったものじゃなく、なんらかの魔力が作用していた。その魔力の持ち主を見つけ出す。ジェニーも一緒に付いてきてほしい」


「私は、どこまでもお供します!」

 私がそう二つ返事をすると、シャルル殿下は嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう。今日はこの町の宿でゆっくり過ごし、明日の朝サンクの町を目指す。俺はお前と無事合流出来た事を知らせるため城への書状を書くから、ひとまず先に宿で休んでいてくれ」


「お城へ報告……王様たちも、もうこの事は知ってるんだね」

「あぁ、あの女との婚約は破棄することも、俺が生きていることも、この町を拠点に活動している事も、全て報告し、その上で俺にこの件を一任してくれている。だから安心してほしい」


「そんな話が進んでいたなんて……。分かった、私も今日は色んな事があって疲れちゃったから、お言葉に甘えて宿屋で休ませてもらいます」

「そうだろう。色々と無理をさせてすまなかった。ゆっくりと休んでくれ」


⸺⸺


 シャルル殿下の用意してくれた宿屋はこの町で一番大きい宿屋で、個室も私の実家よりも大きいんじゃないかってくらい広かった。

 念の為護衛に付いてくれているチビファフニールと共に今日の濃かった1日を振り返りながら、部屋でゆっくりと疲れを癒やした。


 明日からはもうモブじゃない。聖女としての勇者様との旅が始まるんだ。今までの18年間とのギャップが激しすぎて、楽しみで少し涙が出てしまった。

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