第13話 全てを悟ったシャルル殿下
「ふぅ~。こんな美味しい料理食べたの初めて」
「腹は満たされたか?」
「うん、お腹いっぱい……あっ、お話聞くって言ってたのに、つい食べるのに夢中になっちゃった……」
今更恥ずかしくなり、うつむいてモジモジする私。そんな私を見てシャルル殿下は優しく微笑んでいた。
「構わん。では、1ヶ月ほど前俺がファフニールの討伐に行ってから何があったのか、話すとしよう」
「お願いします」
食後のコーヒーが届いたところで、殿下が口を開く。
「俺が火山洞窟の最深部へ行きファフニールを見た時、コイツは邪竜ではない事に気付いて対話を試みた。すると、コイツは400年前の勇者の嫁探しの旅に同行した古竜だった」
「400年前!? すごく長生きだね」
『600年ほど生きている。と言っても、そのうちの400年は封印されておったがな』
ファフニールは小さな鼻をフンッとならした。
「ファフニールは400年前に勇者への求婚を断られた魔女の逆恨みで呪いをかけられて壺に封印されて火山洞窟へ幽閉されたらしい」
「えぇ……可哀想。ってか400年前もやっぱ勇者とか聖女とかってあったんだ……」
『うむ。今とやっている事は大して変わらん。むしろ今よりも自分が聖女だと偽って勇者に求婚する者が多かった印象だ』
「だから“偽聖女罪”なんてものができたんだね……」
シャルル殿下は軽く頷いて話を続ける。
「壺の中には魔物の素となる“黒い気”という禍々しい成分が入っており、それに400年間浸けられた事で呪いが完全に身体に定着してしまい、呪いをかけた本人が死んだ今でも身体の大きさを変えたり等の力が使えなくなったらしい」
「そんな、ひどい……」
「そして、ファフニールの封印は村人らが自ら解いたものだと教えてくれ、自作自演だと言う事が分かった。俺が聖女を連れ帰る事で村への恩恵がなくなると考えたのだろう」
「うん……シャルが帰って来なくて、村の大人たちはすごく喜んでた……」
「やはりか……。だが俺はジェニーが聖女であるという確信があった。そして聖女の魔力であればファフニールの呪いを解くことができると考えて、俺自身もジェニーを手に入れるためにコイツにひと芝居打ってもらったんだ」
「芝居をした事は何か意味があるの? 直接私を連れて行くって事は……」
「お前が聖女だと村人らに悟られたくなかったのと、お前への待遇を確認したかった。村人らはお前を平気で身代わりとして生贄に差し出した。俺は……そんな村に情けをかけるつもりは微塵もない。今後、村を救ってやるか見殺しにするかを見極めるためにひと芝居打ったが、結果は“見殺しにする”事に決まった」
「見殺しって……あの村、どうにかなっちゃうの?」
「なるさ。長寿の水が手に入らなくなるからな。“お前の恩恵を受けていたあの水”でアイツらは暮らしていたんだろう?」
「あっ、私が居なくなったから……?」
その言葉に対しシャルル殿下はこくんと頷く。
「自ら追放したんだ。自業自得だな。それでも、俺とお前がすぐに結婚をして加護の儀を行えば国全体にお前の加護が行き渡ると言われているから、長寿の水も出続けたかもしれんな。だが俺は、すぐには結婚しない事にした。まだ出会ったばかりだ。そんな村の加護より、ちゃんとお前との段階を踏みたい」
『段階って、もう既に色々すっ飛ばしてキスをしたのはどこのどいつだ?』
ファフニールが呆れたような口調でそう言うと、シャルル殿下は真っ赤な顔で「うるさいぞ」と怒っていた。
「あっ、段階ってそう言う……」
恋愛の段階であることを悟り、私も頬が熱くなるのを感じた。
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