第11話 初めての村の外
⸺⸺フォルティア大平原⸺⸺
火山を抜けてエッケの村とは反対の小道を進んでいくと、見渡す限りの大平原へと出た。
「うわぁ……」
村と火山までは道で繋がっていたため、本当の意味で村の外に出るのはこれが初めてであった。
私は今までなんと狭い世界で生きてきていたのか、それを思い知らされる。
それと同時に、その平原のあちこちに黒いモヤが散らばっている事に気付いた。そのモヤのうちの一つが、こちらへと近付いていくる。
「ジェニー。俺の後ろに隠れていろ」
シャルル殿下はそう言って私を自身の背中へと押しやる。
「は、はい。あの、あれは……?」
そのモヤは私たちの近くまで来ると狼の様な姿をしている事が分かった。
「あれは魔物だ。あの村には一応結界があったからな。見るのは初めてか?」
シャルル殿下がそう言って剣を引き抜いてひと振りすると、斬撃が飛んでいき魔物を真っ二つに切り裂いた。魔物はそのまま黒い霧となって消えていく。
「あわわ、す、すごいです。剣から何かが飛んでいって……! あの、見るのは初めてです」
彼は何でもないように剣を
「そうか。あれは人間の魔力に反応して襲ってくる。特にお前の魔力は目立ちすぎるから、俺から離れないようにしろ」
「分かりました……」
「まぁ、ここまで来れば村の奴らにも見られないだろ。ファフニール、頼む」
『御意』
ファフニールは返事をした瞬間みるみるうちに姿が大きくなっていき、緑の鱗の巨竜へと変身した。
シャルル殿下は「失礼」と言って私を軽々と抱き上げると、そのままファフニールの背中へと飛び乗る。そして、ファフニールはゆっくりと飛び上がった。
「わぁぁぁ……!」
どんどんと高度が上がり、エッケの村や火山、反対の方角では街道に町が一望でき、その圧巻の光景に思わず感嘆の声が漏れる。こんなの前世でも体験した事がない。
「怖くはないか?」
すぐ後ろからシャルル殿下の声がする。気付けば彼に後ろから抱き締められていた。
「大丈夫です。とても気持ちが良いです」
「そうか。ならこのまま『トレイルの町』の近くまで行こう」
『御意』
ファフニールはゆっくりと滑空をしながら前方に見える街道の上空まで飛んでいく。そしてその街道に沿って町の近くまで飛んでいき、街道の上へと私たちを降ろしてくれた。彼はすぐにチビ竜の姿へと戻っていく。
村を出てすぐにこんな体験が出来るなんて。それだけで、今まであの居心地の悪い村に我慢して住んでいて良かったと思えた。
「さぁ、トレイルの町だ」
シャルル殿下の後に続いて町の入り口をくぐると、中世ヨーロッパを思わせる賑やかな町の雰囲気にまたしても「わぁぁぁ」と声が漏れてしまう。
前世の薬屋の娘だった頃に住んでいた町にも少し似ているなと思った。
殿下と二人で歩いていて、ふと店のガラスに映った自分を見て、顔はマシになったけど、ボサボサの髪とみすぼらしい服が、隣にいる殿下の質を下げてしまっているのではないかと思うと、心が痛んだ。
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