第ニ十章
『アレンへ セッションライヴ凄く楽しかった。本当に、ありがとう!兄も帰ってから何回もアレンのことを誉めていたよ。将来が楽しみなギタリストだって言っていたよ。ところで話は変わるけど…本当はセッションライヴを約束した時か、その後にアレンにキチンと話しておきたかったんだけど手紙で伝えることになってしまって、ごめんね。アレンが、この手紙を読んでいる頃、僕は、ヴァイオリニストとしてツアーに行かなくちゃならなくて外国にいます。アレンに一番に話しておかなくちゃいけなかったのに。本当にごめんね。ツアーは3ヶ月くらい行く予定なんだ。だけど、その後は外国に留学することになっているんだ。』
外国に留学──────っ?
そんな、一緒にロックバンドをやろうって誘ってくれたのに外国に留学?
バンドは、いつやるのさ?
アレンはクラクラしたが手紙には、まだ続きが書いてあった。
『だけど僕が留学するからと言ってもアレンと一緒にロックバンドをやりたい気持ちが変わったワケじゃないんだ。僕が戻ってきたら、アレンが良ければ今度こそロックバンドを結成したいと思っているよ。ちゃんとベースも練習しておくし、何か曲を書いたらアレンに送るよ。ただ、アレンは本当にギターが上手だから、これから色々とバンドに誘われることがあると思う。だから沢山の色々な人達と一緒にセッションしたり、バンドを組むことになったりすることもある思う。だから、もし僕が戻ってきた時にアレンが良いバンドに入っていたら、その時は、それでいいと思う。その場合は、また寄せ集めのメンバーで一緒にセッションしくれたらいいなと思っているんだ。だけど、アレン、ひとつお願いがあるんだ。僕のこと、忘れないで欲しい 演奏旅行のこと、留学すること言えなくて、ごめんね 』
手紙は最後に、もう一枚、便箋があった。
p.s.
『もし、もしもギターが壊れてしまってアレンが困ったらパークタウンの西南のはずれに僕の叔父が経営しているダンバー修理店があるから行ってみて。
叔父にアレンのこと話しておくけど、お店だから修理費かかるから、お小遣い貯めておいて』
アレンは読み終わると軽くクシャッと手紙を握った。
過ぎるほど、突然居なくなってしまった。
涙が滲んできたけど、二度とロバートに会えないワケじゃない。
曲が出来たら送ってくれるって。
戻ってきたら一緒にバンド結成したいって?
でも、僕が他にバンド決まっていたら、それは構わないって?
だけど、ロバートのこと忘れないでって?
そりゃ忘れないよ。忘れないさ!
だけど…
アレンはスタジオを飛び出した。
外に出たアレンは俯いた。
どうすればいいのか解らなかった。
「やぁ、アレン」
前方で声がした。
顔を上げるとライアンが、アレンを見ていた。
髪を後ろで、ひとつに結び黒いセーターにジーンズで濃い茶色のコートを着ている。
昨日の女装姿とは全く違っていた。
同一人物だなんて、彼をよく知らない人は思いもしないだろう。
「こんにちは」
アレンは泣きかけていたので、やや涙声になりながら挨拶した。
「昨日は、ありがとう。今さっき、執事からアレンが手紙を受け取って帰ったって聞いたから会えるかもしれないと思って来たんだ。散歩でもしながら少し話さないか?」
「あ、はい」
アレンはジーンズのポケットにロバートからの手紙を入れてライアンと歩き始めた。
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