第十五章

土曜日、アレンはロバートから借りたアコースティックギターを、丘の上で弾いていた。

ミシェルが隣に座って聴いている。いつもの土曜日の平穏な、ひとときだった。

「アレン」

ロバートが丘に登ってきながら声をかけてきた。

「ロバート!」

ロバートはアレンとミシェルの近くまで来るとニッコリ笑って話し始めた。

「アレンのギター治ったよ」

「わぁ!ありがとう!ロバート」

アレンはロバートから借りたギターをクロスで丁寧に拭いてギターケースに仕舞った。

「ギター渡すから、これから家に来ないか?もちろん彼女も一緒に」

3人は連れ立ってロバートの家に向かった。


ロバートの部屋に通され椅子を勧められて腰掛け、二人は暫く待っていた。

アレンは手持ちぶさたでロバートから借りたギターを取り出してクロスで拭いて再び仕舞った。

間もなくロバートがアレンのギターケースを抱えて部屋に戻ってきてアレンにギターを渡した。

「ありがとう!」

アレンは涙ぐみながら受け取ってロバートに借りていたギターを返した。

「弾いてみてよ」ロバートが言う。

「うん!」

約1週間ぶりの自分のギターだった。

ネックの部分が違うことにアレンは気付いた。

とても良く似ているけど、違う。

試しに弾いて改めて御礼を言ってアレンはギターを大切にケースに仕舞った。

そして、

「ロバート、ネック替えてくれたよね?修理代受け取ってよ。僕、一生かかっても払うから」

と言うアレンにロバートは笑顔を見せた。

「ネック…やっぱりバレたか。さすがだな。めちゃめちゃ似ているのを選んだんだけど。う~ん…どうしても払いたい?」

「当たり前だよ!」

ロバートは、しばらく考える様子を見せてからアレンの方を向いた。

「じゃあ、パークタウンの専門店のツナチーズトーストとタマゴサンドとオニオングラタンスープのセットで♪」

聞いていたミシェルが笑いだした。

アレンはロバートが考えていたのを見て少しは、お金を受け取ってくれるかと思っていたので少々拍子抜けした。

「あのタマゴサンドの専門店、凄く美味しいって評判なのよね。私も行ってもいい?自分の分は払うわ」

3人は次の土曜日に、と約束した。


 

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