第二十一章

 砂利道をザクザクと音を立てて二人はしばらく無言で歩いた。

分厚い雲に太陽が隠れ陰ると寒い日だ。

「あのっ…なんか昨日と雰囲気が違いますね」

アレンがライアンに話しかけた。

ライアンはアレンを見つめると、フフッと笑った。

「最初は追っかけとか欺く為に女装してたんだけど、これが、やってみたら大成功で誰も気付かないから楽しくなっちゃって、今は女装が趣味でもあるんだ。いつも女装しているわけではないんだけど、その日の気分でね」

「追っかけ?」

「うん、そう。一応プロとしてバンドで歌っているんだけどツアーで行く先々で時々、しつこい追っかけがいたりする時があるんだ。ツアー先でも外出したり買い物したり自分ひとりの時間が欲しいからね。ところで」

ライアンは立ち止まり空を見上げてからアレンを見つめた。

「ロバートからの手紙、もう読んだ?」

「あ、はい…」

ライアンは微笑みアレンの頭に手を置くと優しくクシャッと撫でた。

「あの子、家で何回もアレンに言わなくちゃって言ってたんだけど、昨日は皆ノリノリで、しかも観に来てくれたお嬢さんの御両親を心配させてバタバタしちゃったからね。家に帰ってから何回も手紙を書き直していたんだよ。ツアーはけっこう前から決まっていたんだけど…留学は親が勝手に決めていたからね。ロバート自身も留学に関しては寝耳に水で。怒っていたんだけど…僕からも謝るよ。ごめんね」

「そんな…それなら仕方ないです。ツアーに行くのは3ヶ月くらいって言ってたけど、留学は、どのくらいなんですか?」

ライアンを見上げるアレンの目に涙が溢れて頬を伝わった。

「ロバートは試しに1年だけだからねっ!と親に言ってたけど…兄の僕が言うのもなんだけど、あの子、優秀だから…もしかしたら2、3年かもしれないし、それ以上になるかもしれない」

2、3年…

でも、僕はまだ十一歳だし、まだまだギターだって練習していかないといけない。

ううん、一生、練習は必要だ。

「僕、待ってます。ロバートと一緒にバンド組むって約束したし、もし2、3年以上経って、お互いに考えが変わっても友達でいられたらいいなって思っ…」

そこまで言うとアレンは涙が零れて言葉が途切れた。

ライアンはポケットからハンカチを取り出して、しゃがむとアレンの涙を拭いた。

しばらくの間、アレンが泣き止むまで待っていた。

「ありがとう、アレン。その気持ち、とても嬉しいよ。そろそろ僕は行かないといけない。話してくれて、ありがとうね。僕がまた、こっちに帰ってきたら連絡するから、寂しいかもだけどロバートが居なくても一緒にセッションライヴやろう。家の電話番号、教えてくれるかい?」

「はい!」

アレンが伝えてライアンは手帳にメモした。

「じゃあ、またね」

ライアンはアレンと握手すると、自分の家の方向に向かって歩いて行った。




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