第三十一章
それからロバートから何も連絡が来ないまま年月は過ぎて行った。
ミシェルからは誕生日とクリスマスにカードが届くようになった。
しかし、いつも差出人住所が書いていなくて返事を送れなかった。
「所詮は、そんなものなのよ。忙しいなら無理して書かなくてもいいのに。一方通行で返事が書けないなんて、こっちのストレス溜まりまくりよ!」
スタジオに遊びに来ていたロジーが膨れっ面で言った。
「いつまでも子供の頃のままじゃいられない、みんな、それぞれの道を進んでいく、って言いたいんでしょ」
ロジーがアレンを見上げて言った。
「う~ん、まぁ、ね」
アレンが苦笑いしながら返事した。
──なんでも始まりがあれば、いつか終わる。
ミシェルは転校して、寮生活が上手くいかなくて、間もなくミシェルの両親は娘と暮らすべく引っ越して行った。
その一年後にミシェルが両親と住んでいた家は売られ、今では外国人が、その家に住んでいた。
本当に、もう会えないのかもしれない。
アレンは十八歳になっていた。
「解っているわ。私だって自分が目指す道を進むんだもの。アレンとも、そろそろお別れよね。色々楽しかったわ。ありがとう!」
ロジーが寂しげに言った。
ミシェルが転校した後にアレンはロジーの家で開催されるクリスマスパーティーライヴに出演してからは毎年、参加するようになり、シンガーを目指しているロジーは時々アレンの家のスタジオに歌いに来ていた。
アレンは音楽大学に入学が決まっていたし、ロジーは外国に留学することになっていた。
「こちらこそ。ありがとう、忘れないよ、ロジー。休みに帰ってきたら連絡するよ。タイミング合ったら、またライヴしよう」
「そうね、それにクリスマスパーティーライヴもしたいわ」
二人は握手して別れた。
アレンの大学生活は順調だった。
ギターの腕も上がってバンドに誘われ、オリジナル曲を作った。
物真似と、悩んでいたことはアレンが多くのセッションに三回して腕をあげて行くにつれ薄まっていった。
夏休みになってアレンは実家に戻ってきた。
家の玄関の前に誰かが立っているのに気付いた。
背が高い後ろ姿に軽くウェーブがかかったミルクティーのような色の髪は肩まであった。
「ライアンさん?」
アレンが声をかけると、ゆっくり振り返ったのはロバートだった。
「なんで俺が兄貴なんだよ。似てるか?」
「ロバート!」
「お互いにデカくなったな」
と、ロバート。
約八年ぶりだろうか。
「ノックしても返事がないから誰も居ないみたいだから帰ろうかと思っていたんだ」
「あ、ママは街に買い物に行っているんだ。さっきメールがきた。あがってよ」
アレンが鍵を出して開けながら言った。
(この時代から携帯電話が普及し始めた頃だと思ってください※作者注)
「ママがアイスティ作ってくれてる。飲む?」
「うん」
二人は、しばらく無言だったがロバートが先に口を開いた。
「ごめんな。手紙すら書けずに…八年ぶりか?アレン、大学に行っているのか?」
「うん」
「バンド活動しているのか?」
「うん」
「そうか、良かった。ろくに挨拶もしないで留学して、気がかりだったけど」
──そういえばヴァイオリニストよりロックバンドのベーシストになりたいんだって膨れっ面で言われて別れて、それきりだったっけ。
「ロバートは?今、どうしているの?」
聞けばロバートはアレンが通っている大学の隣の州の大学生だった。
しかも近隣の州からバンドが何組か集まってサマーフェスティバルライヴをするということになっている、という。
「大きな会場があるんだ。アレン、一緒に出演しないか?実はギタリストがいなくて困っていたんだ」
アレンは、喜んで参加することに決めた。
何よりも、ロバートと一緒に出演できることが嬉しかった。
アレンは、うち二曲が以前にロバートから渡された楽譜の曲と新しく三曲の演奏曲目を覚えて、当日、初顔合わせしたメンバー達と本番で演奏することになった。
ぶっつけ本番かと思いきや、リハーサルがあった。
「みんな紹介するよ、今日、ヘルプしてくれる俺の友人、アレン・ヴァーノンだ。アレン、今、俺と一緒にバンド活動しているメンバーだ」
ロバートが紹介した。
「リハーサルがあるとは言え、初顔合わせじゃん。大丈夫なのか?」
濃い茶色の髪を長くしたヴォーカリストの男が偉そうにアレンを見下した様子で言った。
「充分に練習してきたよ。リハーサルを聴いてから言ってもらおうか」
アレンが言い返した。
せっかく演奏できるのに、こうした態度で和を乱すようなヤツは時々いる…せっかくロバートと一緒にステージに立てるのに。
いや、だからこそ演奏に集中しよう。
「ブルートパーズさん、そろそろスタンバイお願いします」
進行係からバンド名を呼ばれアレンはギターを持って立ち上がった。
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