第六章

 土曜日、学校が終わるとアレンは急いで帰る支度をした。

「アレン、今日なんか急ぐの?」

ミシェルが声をかけてきた。

「うん。ちょっと約束があるんだ。またねミシェル」

アレンは急いで家に帰るとカバンを置いてから飛び出した。

裏手の丘を駆け登り、下って火曜日に行ったダンバー邸にロバートを迎えに行った。


アレンはロバートと一緒に自転車でパークタウンに行き、楽器屋でロバートに見立ててもらって弦を購入した。

その後はキャラメルポップコーンを頬張りアイスコーヒーも飲んだ。

何も話題がないまま無言で向かい合って座っていた。話題はないけど気まずくはなかった。

するとアレンとロバートの傍を通り過ぎた大人達がロバートを露骨にジロジロ見てヒソヒソと何か話しながら去って行ったが、遠く離れた場所からも、その大人達は、まだロバートを見ている。

ロバートは遠くから、まだ見ている大人達から嫌そうに顔を背けた。

たぶん、ロバートがテレビに出ているから大人達が、こんな所に居るロバートを見て噂話でもしているんだろう。

アレンはロバートに会ったら折を見てテレビで見たことを言おうとカッコよかったと伝えようと思っていたけど…止めた。この様子では、きっとロバートは、その話題を嫌がる。

なんだか、そんな気がする。

アレンは俯いてアイスコーヒーが入っていたコップの底に残っている氷をストローで、つついた。

「そろそろ、行こうか」

アレンは何も見ていなかったかのようにロバートに声をかけ、自転車に乗るとロバートも立ち上がった。

二人は無言のまま互いの家に向かった。

先にアレンの家の前に着くと、

「弦、見立ててくれて、ありがとう!」とアレンは礼を言った。

「こちらこそアイスコーヒーとキャラメルポップコーンありがとう。旨かったよ、ごちそう様。じゃあな」と、言って颯爽と去って行った。


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