第五章
アレンは家に帰ると手を洗って居間に入った。
母親がキッチンで、ちょうどオレンジサイダーとポテトチップスを用意していた。
テレビがついている。
アレンはキッチンに行きサイダーだけテーブルから取り居間に行ってテレビの画面を見て持っていたサイダーが入ったコップを落としそうになった。
テレビに映っているのは先ほど鮮やかな手際でアレンのアコースティックギターの弦を張り替えてくれたロバート・ダンバーだった。
ヴァイオリンを弾いている。
アレンはポカンとテレビの画面を見つめた。
「アレンったら…座りなさいな」
ポテトチップスを運んできた母親が言いながらソファに座った。
それでもつっ立ったままの息子に顔を向け、
「どうかしたの?ポテトチップス、好きでしょう?」
と声をかけた。
「あ、えっと…うん」
他人のそら似じゃなさそうだ。
なんかカッコいいんだけど…さっき、木から飛び降りてきた時もカッコよかったし、弦の張り替えも鮮やかだった。同い年くらいなのに、なんかスゲー。
アレンがテレビに見入っているので母親がテレビの画面を見て口を開いた。
「ああ、この子確か、この近所に住んでいるのよ。弦楽器ならば、なんでも弾きこなせる神童なんだそうよ。アレンより1歳くらい年上だったと思うわ」
「僕、たった今、会ったんだ。裏手の丘で」
アレンはクラクラしながらも答えて弦を張り替えてくれたことも話した。
タダじゃ悪いから週末にアイスコーヒーとキャラメルポップコーンをおごることも伝えた。
「あらまぁ!そうだったの…なんか凄いお友達が出来たのね。じゃあ今夜の晩ごはんの支度を手伝ってくれたら週末の お小遣い弾むわよ」
「うん!手伝うよママ」アレンはサイダーを飲み干した。
週末の楽しみが、ひとつ出来た。
さっき会ったばかりなのに僕を友達だと言った彼は、どんな子なんだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます