第四章
二人の少年は丘を下り、幅広い砂利道を十五分ほど歩いて行くと大きな家に辿り着いた。
アレンは、こっちの方には来たことがなかった。
「入って」少年はアレンの手を引っ張り家の中に連れていった。
執事らしき黒服の四十代くらいの男性が出迎えた。
「坊っちゃま、おかえりなさいませ。いらっしゃいませ。お友達ですか?」
「ただいま。うん、そう友達」
友達って…少し前に会ったばかりなのに…戸惑うアレンを少年は手を引っ張り部屋に入った。
「適当に座って」部屋に入ると少年は机の引き出しを開けるとガサガサとギターの弦を取り出した。
「ギター、貸してくれる?」少年はアレンに言った。
「いや、だって、その弦、君のだろう?悪いよ」
少年はニヤリと笑うと、
「それなら弦、いつ買いに行くの?」と訊いた。
「うーん…週末にパークタウンに行って買う予定なんだ」アレンはモジモジしながら答えた。
「今日、まだ火曜日じゃないか…それまで5本の弦でギター練習するのは無理あるんじゃないか?」
少年は手を差しだしギターを渡すように示した。
「でも、悪いよ。君の弦じゃないか」
言い張るアレンに少年は笑うと、
「なら、週末に一緒にパークタウンに行って僕にアイスコーヒーとキャラメルポップコーンおごってくれない?それでチャラ。どう?」
タダじゃないなら…それなら…アレンは納得して少年にギターを渡した。
「こうやって引っ張りながら巻いて張るんだ」少年は、あっという間にギターの弦を張り替えた。
「早いね…手品みたいだ!ありがとう!」
目をパチクリさせてアコースティックギターを受けとるアレンに少年は、
「すぐに出来るようになるよ。俺、ロバート・ダンバー」と名乗った。
「ああ、僕、アレン・ヴァーノン。本当にありがとう」
ドアがノックされ、ロバートが返事をすると先ほどの執事が顔を出した。
「坊っちゃま、せっかくお友達にいらして頂いているところを申し訳ありませんが…」言いかけるとロバートが、
「ああ、そうだったね。すぐに支度するよ。アレン、帰り道解るよね?」と訊いた。
「うん、大丈夫だよ。本当にありがとう。じゃあ、週末にね。迎えに来ればいいかな」と言うとロバートが頷いた。アレンはドアに向かった。
執事が玄関まで送ってくれた。
「また、いらしてくださいね。坊っちゃまは友達が少ないので」と言い添えてアレンが門を出るまで見送った。
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