第十章

  アレンは練習してギターの腕をドンドン上げていった。

ミシェルは毎週聴きにくるようになった。

「ねえアレン、一緒に帰ろう」

土曜日、学校が終わって帰り支度をするアレンにミシェルが声をかけてきた。

隣家だし方向は一緒なのでアレンは頷いた。


学校を出た門の所でアレンとミシェルの目の前にクラスメイトのジャック、トム、ディックの3人が無言で立ち塞がった。

いつも、つるんで色々悪さをしていてクラス委員のミシェルや担任の先生から注意されている3人組だった。

「何か用?」ミシェルが強気に言った。

「別にぃ~」ジャックがクチャクチャと音を立てながらガムを噛んでいる。

「何も用がないならどいて。邪魔だわ」

3人が退きそうもないのでミシェルはアレンの腕を引っ張り3人を避けて校門を出た。

しばらく歩いてからアレンが振り返って見ると、3人は、じっとアレンとミシェルを見ていた。

なんか感じ悪い…

「なんか、感じ悪いわよね」ミシェルがアレンが思っていたのと同じことを言葉に出した。


ミシェルはアレンを自分の家の前で待たせてカバンを置いて出てきた。

今日もアレンのギターを聴きに行くのだった。

二人が連れだってアレンの家に向かっていると後方から、さっき校門の前で立ち塞がったジャック、トム、ディックが自転車に乗ってきて、アレンとミシェルの周りを、グルグルと回り始めた。

「なによ!バカじゃないのアンタ達!」

3人はニヤニヤしながら自転車で回り続けて二人が、その先に行かれないようにしている。

アレンとミシェルは顔を見合わせた。

バカ過ぎて相手にする気にもなれない。

「私が泣き出すとでも思っているのかしら…ナメられたものね!」

ミシェルがアレンに囁いた。

しかし、グルグル回っていてトムがバランスを崩して倒れ、その後ろから自転車をこいでいたディックがトムの自転車にぶつかってジャックも、ぶつかり悪ガキは全員、自転車ごとコケて自滅した。

「バ───カ!」

ミシェルは言い捨てアレンは笑いながら二人は悪ガキ達から去っていった。


丘の上でギターを弾いたりミシェルと雑談してアレンは穏やかな土曜日の午後を楽しんでいた。

「ねぇ、アレン…あのね、」

ミシェルが言いかけた。

「うん?」

「私ね、先週ジャックから映画を観に行かないかって誘われたの」

アレンは驚いた。

「え?ジャックって、さっき自転車で邪魔してコケたジャック?」

ミシェルはアレンの顔を見ないで頷いた。

「それで?OKしたの?」

アレンはドキドキしながら訊いた。どうして、こんなにドキドキするのかも疑問に思いながら。

「ううん。観たばかりの映画だったから…ごめんなさいって断ったのよ。ジャックって、いつもふざけてばかりいて先生にも、よく叱られているけど、いつになく真面目な態度で話しかけてきたから、なんだろうって思って話を聞いたら」

ミシェルは、ため息をついた。

「それじゃあ、さっき自転車でグルグルと僕達の周りを回ったのはミシェルに断られた腹いせ?」

「…やっぱり、そうなのかしらね…でも、あんなバカなことしたら嫌われるかもとかって考えないのかしら…あっ!」

ミシェルは前を見て驚きの声をあげた。

アレンも前方を見ると、ジャック、トム、ディック達が丘を登って向かって来るのが見えた。

「どうする?ミシェル」

アレンが彼らを見ながら訊いた。

「さっき、何か用?って訊いた時は別にって言っていたでしょう…でも自転車で、あんなことして。しかも今度は、ああやってワザワザ来るのだから何か言いたいなら聞こうと思うわ」



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