第十一章
3人はアレンとミシェルの前に来て止まった。
「いよう、御両人!」トムが口を開いた。
「ムカつくな~」と、ジーンズのポケットに両手を突っ込みながらジャックが言った。ディックはニヤニヤして腕を組み二人を見おろしている。
ミシェルは立ち上がってジャックに向かって口を開いた。
「ねぇ、ジャック…何か言いたいなら、ちゃんと言ってよ。映画なら、この前誘ってくれたのは観たばかりだったから…でもまた別の映画でチケットを買う前に誘ってくれたら私、」
言いかけたミシェルの前でジャックはみるみる顔が真っ赤になった。
「う、うるせーよ」
ミシェルの言葉を遮って、そう言うと座っていたままのアレンに近づくとギターケースを乱暴に取り上げた。
「え?何、ちょっと返してよ」
アレンは立ち上がりジャックに近づいてギターケースを取り返そうとするとディックがアレンの前に立ちはだかった。
「ディックどいてよ。ジャック、僕のギター返してよ」
ジャックはギターケースからギターを取り出した。
「やめろよ!勝手に出すなよ」
と、アレンが近づこうとしてもディックは、しつこくアレンの動きに合わせてジャックに近づけまいとしている。
「ちょっと!ジャック、なんなの?やめなさいよ返しなさいよ!」
ミシェルもジャックに近づこうとするとトムがミシェルの前に立った。
「どきなさいよ!」
「なんだよ、こんなもの!」
ジャックはギターの弦を乱暴に引っ張った。
「うわあ───っ」
アレンが叫ぶのと同時にミシェルが自分の前に居たトムを突飛ばしジャックからギターを取り返すと思いっきりジャックの頬を平手打ちしてジャックは芝生に転んだ。
「言いたいことがあるならキチンと言いなさいよ!物に当たるなんて最っ低!アレンのギターを壊しても何も意味ないでしょう!アレンに謝りなさいよ!」
ジャックは叩かれた頬をおさえて無言で起き上がるとクルリと向きを変えると丘を駆け降りて行った。トムとディックもジャックの後について行った。
「人の大切な物をワザと壊したらいけないんだから!このことは先生に言うからね!」
ミシェルが立ち去っていく悪ガキ共に大声で叫んだ。
「弦が、こんな…ギター壊れちゃったかしら」
ミシェルは言いながらジャックから取り返したギターをアレンに渡した。
アレンはギターを受け取って引っ張られた弦を見た。
3本が無惨に伸びてしまっていた。
その他は大丈夫そうに見えた。
ミシェルが心配している。
「うん…」
アレンはギターをケースに仕舞うと家とは反対方向に丘を降り始めた。
「アレン?何処に行くの?そっちは家じゃないでしょう」
ミシェルが追いかけてきた。
アレンは、ロバートにギターを診てもらいたいと思っていた。
鮮やかに弦を張り替えてくれたロバートなら…
ミシェルは先を歩いて行くアレンに小走りで追いついた。
「何処に行くの?」
アレンはミシェルの問いかけに答えずに無言で俯きながら歩いている。
「私、こっちの方には来たことなかったわ」
ミシェルは周りを見渡しながら言った。
丘を下りて両サイドに大木が茂る幅広い砂利道を二人はザクザクと音を立てながら歩いた。
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