第4話 兄の一割
「それで、あなたはお兄さんの力を手に入れた……だから激的に伸びたってこと?」
話は水無瀬と神邏の会話に戻る。
前回までの回想の通りなら、授業についてこれなかった神邏の急激な伸びは説明できるのかもしれない。
「でも、一割でしょ? そのくらいで強くなれるものなの?」
当然の疑問だろう。――しかし、
「まあ、知らないなら仕方ない事。兄を知ってるものなら、疑う余地はないと思う」
「そ、そんなにすごい人だったの?」
「「言うまでもねえだろ」」
突然二人の会話に謎の大男が入ってきた。
顔に大きな傷、二メートルはあるかと思われる長身、大人びた佇まい……只者ではなさそう。
神邏は誰かと思い問う。
「……どちら様?」
「オレはこの中等部の生徒会長、
中等部という事は中三……十四、五歳ということになる。
神邏は失礼ながら、教師かなにかだと思った。
生徒会長……噂には聞いたことがあった。
学園始まって以来の大天才。本来高等部への進学が義務とされてるこの学園で、中等部卒業と同時に天界軍入隊が許された神童だとか。しかも幹部、ランカーの椅子まで開けてもらっているとの話も。
当然学園最強の男だ。
「生徒会……なんで俺を誘うのですか?」
「周辺や人間界での妖魔退治、軍がいちいち回っていられない小さな任務を請け負うのが生徒会の死語でな。実力者はこうしてさそうわけだ。無論、そこの水無瀬もスカウト中だ」
「……今の話聞いてたなら、あまり信用できないと思いますよ? インチキで手に入れた力ですし」
大罪人の劣化コピーと完全になり得たかは不明。実のところ一応の成功となっただけで、まだ一割にも満たないはず。
そのうえ、兄のよからぬ心もコピーされてる可能性だってないとは限らない。
自分は危険かも知れませんよと、神邏は言いたいのかもしれない。
――だが、
「構わん。才あるものがオレは欲しい。力を得た経緯とか、怪しげだとか、そんな下らんものに興味はないからな」
「……」
「そしておそらく、まだあの人の一割には満たってないんだろ?」
「……これからの鍛え方次第だとか」
「ならなおさら実戦は必要。そう思わんか? 人間界にも顔見せできるしな」
……親や妹、ルミア達友人とも会えるというのは、確かにありがたい話だった。
――それに、この西園寺という男、ただ者ではないと感じていた。噂以上。劣化コピーにもなりきれてない自分より強いとすぐにわかる。
これ程の天才の元にいれば、伸びるかもしれない。そう思った神邏は頷く。
「……こんな俺で良ければ」
「よし、なら一緒に来い。丁度もう一人スカウトしてる奴がいてな。そいつと共にいろいろ教えてやるよ」
……意外と面倒見いい人なのかもしれない。神邏はそう思った。
「会長さんがわざわざスカウトに来るって、たった一割がそんなにすごい力なのかしら」
水無瀬ボソリと呟く。
美波修邏を知るものなら当然だろと水無瀬に説教しかねないほどわかりきった事だった。
たった一割でも、おそらく天界軍で相当上位になるのは間違いないからだ。
――一方、神邏達を遠目で見て舌打ちしてる人物がいた……
「研究員さんも、余計な事したもんだよな」
――つづく。
「次回 名門出の少年」
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