第7話 雑用
「おら、ここ掃除行き届いてねえぞ。それとこのポスターは剥がしていい」
西園寺は、神邏、南城、水無瀬の新人三人に指示を行いつつ、自らもテキパキと校内清掃を
「生徒会ってか、雑用部って改名しろと言いたくなるわね……」
水無瀬がぼやく。
あれから数日が経つ。しかしやらされているのはこういった雑用のみ。妖魔退治なんてしていない。
ぼやくのも仕方ないだろう。
だが神邏と南城は文句一つ言わず、仕事をこなしていた。
神邏は会長に何か思惑があると信じてるから。南城は単純に妖魔が今いないからだと判断していた。
そんな三人を遠巻きに見ている数名の生徒会役員の姿があった。
「あいつらが雑用やってくれてるから、楽でいいよな~」
「ホントホント」
面倒事を押しつけれて喜んでるようだった。
一年だろうが三年だろうが、関係なくやらされる雑用業務、それらを全て三人が請け負ってる状況。ならば解放された彼らが喜ぶのは道理だ。
――しかし、一部の者はそう思わなかった。
「甘いでごわす」
太った男が喜ぶ者達に告げる。前に南城に負けた春上だ。
「あの三人はこれからの業務の全てを叩き込まれてるでごわす。つまり、これから生徒会を仕切るのは彼らの内誰かだと会長は思ってる証拠でごわす」
「は!? じゃああの中から次期会長を!? ずっと生徒会で活動してたおれらを差し置いて、あんなポッと出連中を!?」
「実力主義……会長らしいご判断でごわす」
「おれらはともかく、役職持ちの春夏秋冬の春上達は……」
「おいらは既に南城に負けてるでごわす」
だからこそ、何も言えない。そう春上は言いたげだった。
役員達も事の重大さに気づき、全員が動く。
「会長! お、おれらも手伝います!」
必死さを取り戻すかのように動く役員達を見て、ほくそ笑む西園寺。
新星の到来で、自分達の立場が危ういと考えれば、進路などにも影響がある。となると動かずにはいられない。
これも西園寺の想定だったのかもしれない。
いまいち頼りにならない後輩達がこうして切磋琢磨してくれれば、自分の卒業後の生徒会も安泰と思っているのだろう。
そんな西園寺の様子を見て察する神邏は、やはりこの人はただ者ではないと関心するのだった。
この人についていけば間違いないかもと……
♢
そうして業務ばかりをこなす日常であったが、ついにその時がやってくる。
「妖魔が出た。各自、準備してすぐに向かうぞ」
最低限の言葉。その後、役員達はそそくさと準備するも、神邏、水無瀬、南城はどうすればいいかたたずむまで。
「お前らは実力としては申し分ない。だからオレと来い」
西園寺が現場で説明してくれるのかと安堵する。
ところで現場とはどこなのだろうかという疑問がわく。遠出なら全くの手ぶらはまずいのではないのかと、神邏は思っていたのだが……
「学園内……?」
着いた場所は学園の裏庭。
そう、遠出どころか間近だったのだ。調子狂うというか拍子抜けというか。
とはいえ場所など関係ない初の実戦。何が起こるかわからない。故に、一瞬の油断が命取り……
「美波! 来てるぞ!」
西園寺の叫び。ふと神邏は振り返ると、背後に霊体のような下半身をした、鬼のような化け物が、神邏めがけて襲いかかってきていた。
驚愕、恐れ、動揺。
それらの感情がひしめき、神邏は動けなかった。
人は突然の危機にすぐに対応できなかったりするもの。
車に轢かれそうになると驚き、逃げればいいのに体が止まったりするのと同じだ。
西園寺はまずいと思い、助けに向かおうと動く――が、その必要などなかった。
――ザシュッ。
神邏は鬼の首を手刀で飛ばし、妖魔を始末していた。
完全に呆気にとられ、動けなかったはずだ。なのに、蓋を開ければ妖魔を始末していた。
神邏自身は動けなかった。だが、修邏の血が動き、妖魔を仕留めたのだ。
敵を確実に排除し、恐れや躊躇いをもたない大天才の性質……
劣化コピーであろうとも、神邏はそれを受け継いでいたのだ。
だがこれは、
――つづく。
「次回 学園対抗戦」
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