第20話  学園襲撃

 突然の爆発音に何事かと思う一同。

 窓を開け、学園の一階部分を覗き込む。するとある教室から煙がたちこんで……


「「助けてくれ~!」」


 生徒の悲鳴!

 一大事と思い、全員が生徒会室を飛び出していく。そんな中……


「美波!」


 神邏を呼び止める声。

 振り向くとそこには、赤毛短髪の少年の姿。――確か北斗淳平というクラスメイトだ。 

 前に水無瀬が生徒会に入るのを反対していた。

 ※六話参照。


 みんなは先に爆発した教室に向かったため、神邏だけがこの場に残っている。

 なんの用だろうかと疑問に思う。大したことではないのなら、自分も早く現場に向かいたいと考えていた。


 すると北斗は口を開く。


「じ、実はよ、あ、怪しい奴いたんだ。一人じゃこええし、来てくんねえか?」


 何故自分? そう神邏は思った。 さっきまでは軍の周防と葉隠、会長の西園寺もいたのに。

 

 それに北斗は神邏を良く想ってない素振りがあった。

 彼は生徒会が嫌いな様子で、水無瀬を好きに見えた。

 好きな女の子の許嫁が神邏。嫌われるのも、仕方ないと当人も思ってる。

 だからこそ、気にくわない自分に助けを求めるのにはいささか疑問に感じたのだ。


 ――だが、助けを求めてる相手を無視はできない。それに怪しい奴が今の騒動を引き起こした者なら無視はできない。


 一応西園寺に連絡をとり、怪しい奴を見かけたので追いかけると伝える。

 西園寺は無茶はするなと言ったうえで、無理そうなら呼べと言ってくれた。


 これならもしもの時に援軍も来てくれるはず。安心して神邏は北斗についていく事に。




 ♢




 校舎の裏庭付近。

 北斗に言われるがまま、そこに着いた。しかし、特に誰もいない。

 

 すると北斗は突然身をかがめ、小さい茂みに入り込む。


「なにしてる」


 単純な疑問を投げかけるが……


「き、気にすんなよ。……お、お前はそこにいてくれ」

「……は? お前なに言って、そもそも怪しい奴って?」


『なにか御用で? 英雄様のご子息』


 神邏の背後からの声。ゾッとする。低く、冷たい声……

 振り向くと、そこには一人の人物の姿。仮面を被り、全身をローブで纏った大男……


「誰だ」

『情報屋。とでも言っておきましょう』

「情報屋?」

『ええ。魔族に天界の情報売り歩く、しがない者ですよ』


 情報を売り歩く? ピンとこないが、今起きてるこの騒動、引き起こしたのはこの情報屋とかいう奴で間違いなさそうと感じた。


 見るからに怪しさ満点の容姿……北斗の言う怪しい奴とは、こいつで間違いないのだろう。


「この騒動はお前が?」

『そうですよ。魔族を手引きし、学園のガキ共を襲撃させました』

「――!」


 つまり先ほどの爆発音と悲鳴は……魔族による攻撃と、襲われた生徒達のもの……


 早く自分も合流して、助けにいかねばと思うが、あちらは軍の幹部に西園寺もいる。わざわざ自分が向かっても足を引っ張るかもしれない……そう神邏は思った。


 なら自分はこの元凶をどうにかするべき……そう判断するが……


(……何故こいつ、簡単に姿を現した?)


 仮面をつけ、ローブを纏ってまで自らの姿を隠す魔族。隠密に暗躍し、今回の騒動を起こしたと思える。

 では何故神邏にあっさり姿を見せた? 容易な相手と恐れる必要ないから? 顔隠してれば大丈夫だから?

 自分を見た神邏に、口封じをしかける素振りもない。おまけに騒動は自分の仕業だとばらすおまけつき。

 情報屋を発見し、ここに神邏を連れてきた北斗にも何もせず、わざわざ同じ場所にとどまってるのも違和感。

 

 何が目的……?


『ただ一つ補足しますとね、手引きはそうでも、それがしは魔族を天界に引き入れることはしていないのですよ』

「……なに?」

『魔族を天界に招き入れるには、天界人の手助けがないといけませんしねえ』

「どういう……」


 問い詰めようとすると、突然どこからか煙幕が放たれる。

 あまりの煙の量に情報屋の姿を見失う。

 

 すぐさま神邏は風を全身から放出し、煙を吹き飛ばす。


 ……視界が晴れると、情報屋の姿はそこにはなかった。


 逃げるのなら何故わざわざとどまり、姿を見せた?

 ……嫌な予感がする神邏。


「だ、大丈夫かよ美波」


 北斗が茂みから出てくる。

 なぜか視線が泳いでいる。


「ああ。特に何もされてないしな」

「そ、そっか。ならよかったぜ」

「……心配してくれたのか?」

「へ?」


 北斗には嫌われてると思っていた神邏は、意外な表情を見せる。

 本当に自分を心配してくれたのなら、とても嬉しいことだった。


「ありがとう北斗」


 純粋なお礼だった。

 もしかしたら仲良くなれるのかも。そう思えたから。


 しかし、北斗は……どこか様子がおかしい。


「き、気にすんなよ。行こうぜ」

「そうだな。合流しよう」


 とりあえず西園寺達の元に向かうため、二人は走る。


 北斗は……何かを気にしてるように見えた。

 まるで、……



 ――つづく。


「次回 危機的状況」



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