第11話  逸材揃いの代表メンバー

「ハッハ! すごいな今年の西園寺の学園は!」


 解説席に座る天界軍幹部、周防が神邏達の学園メンバーを称賛しながら笑う。


「いい後輩に恵まれたもんっすね西園寺の奴。ま、おれが中坊の時はもっと強かったけど」


 同じく幹部の葉隠が言った。

 周防は葉隠の背を軽く叩く。


「そりゃお前さんは天才。軍の希望とまで呼ばれとる逸材だからなあ! 一緒にしちゃかわいそうだ!」

「ま、それもそうですねえ」


「「どうかな」」


 最高司令館、黄木が割って入る。


「水無瀬は名門出の跡取り、南城もまた名門かつ、朱雀一族。次期朱雀と噂される逸材……それにもう一人」


 黄木は座して黙ってる最後の幹部、美波火人を見る。


「英雄であるお前の息子もいることだしな。火人よ」

「何が言いたい善」

「そのままの意味だ。英雄たる……」


「「え! 火人殿の息子!」」


 周防が食い入るように話に入る。


「次男坊、そうか! 修の弟か! もうそんなに大きくなってるんですか!」

「む? ま、まあな。もう十三、いや今年で十四か」

「てことは! 朱雀の逸材が二人いるわけか!」


 朱雀とは天界の守護神たる聖獣、その中でも神様にあたる四神、四聖獣の事だ。

 四聖獣の血筋をもつ一族のみが

覚醒し、目覚める可能性がある聖獣。

 目覚めたものは四聖獣そのものとして、天界の歴史に名を永久に刻む。


 先代が亡くなるまでは、同じ四聖獣は生まれない。

 四聖獣となる条件は詳しくわかってはいない。最初から決まってるのか、きっかけがあるのか……

 文献にそれらしいものは残ってるようだが。


 ちなみに現代において、四聖獣は白虎一人しかいない。

 同じ時代に四聖獣が四人揃うのも稀なため、もう現れない可能性もあるという。


 朱雀は現在存在しないため、覚醒するものが現れる可能性はある。

 先代が逝去されて二百年ほど経つが、未だ朱雀は生まれてきていない。


「どちらかが朱雀となるかもしれんな! さしずめ朱雛すすうってとこかな!」

「朱雛? なんすかそれは」


 葉隠が首をかしげる。

 周防は笑いながら答える。


「その名の通り、朱雀の雛だよ。鳳雛とかいうだろ?」

「あーなるほど。でもその雛鳥が朱雀となれるのは一羽だけっすよ? どちらもなれない可能性もあるし」

「そりゃあ仕方ないな。その場合はもう一人は朱雛じゃなかったってことになる」

「別の雛鳥が混じってたって話みたいなもんすね。でも一族の逸材なら火人さんも当てはまるっしょ」


 葉隠は火人を見る。当人は特に反応なし。


「天界の英雄たる、朱雀一族の美波火人。そんな人ですら朱雀になれてないわけだし。いや、でもまだ可能性ないわけじゃねえのか?」

「ない」


 火人は葉隠を見ずに、きっぱりと言いきる。


「オレはそんなたいそうな天界人ではないからな」

「何言ってるんすか。デュラン総統率いる魔族の軍隊を倒し、修の乱をおさめた英雄が……」

「息子を手にかけるような男が、朱雀になどなろうはずがない」


 一瞬シンと、静まり返る。

 観客席からの声援だけが周囲に鳴り響く。

 だがすぐに葉隠は沈黙をたつ。


「修邏の野郎は天界に反旗を企てた大罪人、当然の処置でしょ」

「よせ葉隠」


 周防が止めるも、聞く耳もたない葉隠。


「天才って意味じゃあいつが一番でしたが、奴が朱雀にならないでよかったですよ。火人殿が気に病む事なんてねえ。それに……」


 葉隠はその後、神邏に聴かれてはならない事を口にした。


「第一、?」



 ――つづく。



「次回 他校の逸材」

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