第23話  西園寺VS葉隠

「は、葉隠! 西園寺を始末する事、許可するぞ! いや、おいらに楯突こうとした南城も殺せ!」


 密則は冷や汗ダラダラでみっともなく、すがるように葉隠に命令する。


「てめえは何様なんだよ」


 南城は密則の頭を掴んで、壁に向かって投げ飛ばした!


「ほんげえ!」


 激突した痛みで咳き込み、ゴロゴロと痛みにわめく。


「い、いでええ! いでええ! ゆ、許せねえ! 殺せ殺せ!」


 密則のボディーガードらしきもの達が南城と水無瀬を囲う。


「おい北斗! こっちにこねえと巻き添えだぞ!」


 密則の呼び掛けに反応した北斗は水無瀬の手を掴む。だが、すぐに水無瀬はその手をはじく。


「ゆ、ゆかりん!?」


 北斗としては、密則の所に行けばこの騒動から逃げれる。だから水無瀬も巻き込まないように連れていこうとしたのだ。


 つまりは水無瀬のためにしたこと。だから拒絶される意味がわからなかった。


「何してんだよゆかりん! 巻き込まれるぞ!」

「上等よ……神邏に酷いことしようとする奴らなんて、全員敵にまわしてぶっとばしてやる」

「何バカな事言ってるんだよ! 言ったじゃねえか! あいつは魔族と組んで天界を陥れようとしたクズ……」

「神邏はそんな人じゃない! 殿下がハメただけでしょ!」


 水無瀬の気迫にされる北斗。

 

 実際その通りである。

 神邏を気に入らない密則が情報屋と組み、北斗に協力させる事ででっち上げた真っ赤な嘘。


 そもそも魔族を呼び寄せたのは密則のほうだ。奴は自分の罪を神邏に擦り付けようとしてるのだ。

 それもまた、情報屋という謎の人物が考えた筋書きなのだとか。


 北斗は幼なじみの水無瀬が神邏の方を見てる事が気に入らなかった。そこに目をつけた密則に言いくるめられたのだ。


『美波神邏がいなくなれば、お前の元に水無瀬は帰ってくるぞ』などとあるはずもないことを言って。だが北斗は神邏への逆恨みで簡単にのせられた。

 元々嫌いだった偉そうな生徒会連中、そこに水無瀬を入れたのも、水無瀬の好意を奪ったのも美波神邏。ゆえに、密則などの策に協力したのだ。


 情報屋に引き合わせた後、北斗は神邏と情報屋の会話を録画、そして密則に提供。

 その録画映像を改竄かいざんし、情報屋を前回襲撃の魔族に変える事で、神邏を裏切り者のように見せたのだ。


 葉隠辺りはそれにまんまと騙されたわけだ。


「えーい、面倒だ! 全員殺れ! そして美波は連れて行け!」


 密則の指示でボディーガード連中が南城と水無瀬に向かう。

 そして動けない神邏を担いだ者は一目散に逃亡。


「待ちなさい!」


 水無瀬の前には邪魔なボディーガード……


「邪魔するなあ!」


 水無瀬はボディーガードに殴りかかる……



 そして、西園寺と葉隠の戦いも幕を開けていた。


 西園寺は二つの斧を葉隠に投擲とうてき。しかし二つとも葉隠には当たらず、壁に衝突。


「残念。ハズレ。当たる確率はいくつくらいだったのかねえ?」


 葉隠は憎たらしく笑う。

 奴の能力は奇跡を起こすもの。

 西園寺の腕なら、この程度の距離、外すとは考えがたい。

 能力により、外してしまう数%の確率を呼び起こされたのだろう。


 しかし、


 壁に刺さった斧が突然はじける!

 はじけたことによる斧の破片が葉隠を襲う。


 すると葉隠は

 その隙をつく西園寺。

 巨大な槍を精製し、葉隠に切りかかる!


 葉隠は二丁拳銃を精製し、銃で槍を受け止める。


 小さな銃なため、受け止めるのに精一杯。

 完全に力負けしてる格好……


「お前の奇跡を起こす能力、対策はわかってんだよ」

「なに……?」

「奇跡、つまりは


 眉をひそめる葉隠。

 

「1%以下の確率だろうが、起きるものを起こす力。つまり、0%


 葉隠は黙って西園寺をにらんでいる。図星のようだ。


 奇跡というのは起こせるものにのみ起きる事象。100%の事象を覆すものではない。


「さっきの破片、範囲広いよな? あの場にとどまってひとつも破片が当たらないは無理がある。だからお前は避けたんだ」

「試したってわけか?」

「ああ。はじけない確率はオレの実力を考えればゼロだからな。となると奇跡が起きる事はない」


 まんまと西園寺の策にはまった形の葉隠。しかし表情には余裕が見える。


「その程度でおれに勝ったつもりか西園寺。甘いんだよ」

「むしろこれで終わりならガッカリなだけだぜ? 葉隠さんよ」



 激戦は続く……



 ――つづく。



「次回 戦いの決着……?」

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