第24話  戦いの決着……?

 西園寺の槍を抑えきれなくなってきている葉隠。

 銃先で受け止めているため、銃の標準は西園寺には向いてないため発砲しても無駄。


 状況は西園寺が有利……


「な、なにやってんだぁ葉隠! ガキ相手に! お前天界軍の希望なんだろお!」


 密則は慌てふためきながら葉隠を怒鳴る。

 葉隠がやられれば、戦況は悪くなる。

 西園寺、南城、水無瀬は光帝の息子の自分でも容赦なく手を出そうとする輩。

 もしその魔の手が向かってくると思うと、恐ろしくて仕方ないようだ。

 とはいえ身から出た錆。神邏をはめようとした罰なわけだか。


「てめえ……ここまでやるとは思ってなかったぜ。天界上位クラスのオレ相手に……」

「あんた程度が上位なのがよくねえ。見てな。おれが天界軍に……いや、らあんたを下っ端として使ってや」


 ――突然、西園寺の背後から飛び散るように血が吹き出る。

 それは当然西園寺のもの……

 彼の背には複数のナイフが刺さっていた


 やったのは葉隠ではない……


『なーに遊んでんだヨ』


 痛みに耐えながら西園寺は振り向く。

 声の主は、コウモリのような大きな羽を生やしたドラキュラのような魔族。牙は長く、くちさけ女のように大きな口。ちなみに男だ。


 背後には配下と思える魔族を数人連れている。


「おお! 七つの大罪人の暴食パンドラ! よく来てくれたぞお!」


 密則は手を叩いて歓迎する。

 奴が招き入れた魔族のようだ。


「おまえ……魔族によく来てくれただあ? 語るに……落ちたな」


 口から流血しながら西園寺は密則をにらむ。


「つまり、魔族を引き入れたのは美波じゃなく、おまえだって言ってるように聞こえるぜ……?」

「あ……」


 神邏を連れ、容疑にかけた理由は魔族を天界に引き入れたこと。どのみち西園寺や水無瀬らはそんなこと信じてはいなかったが、密則がやったという確証はなかった。


 しかし、現れた魔族に対しての発言、これでハッキリした。

 密則が神邏に罪を擦り付けたのだと!


「はん! ならこの場の連中皆殺しにして口封じするだけだあ!」

「このくそデブ!」


 つい水無瀬は暴言を吐いた。

 だがそれは水無瀬に限らなかった。


「七光りのカス虫、てめえこの場からただで逃げ切れると思うなよ」

「おまえ……ただで、すむと、思うなよ。害虫野郎」


 南城に西園寺も、光帝の息子だからって知らぬ存ぜぬの暴言を放つ。

 

 今までそんな態度をとられたことのないどら息子の密則は、怒り狂いつばを吐き散らしながらしゃべりだす。


「このガキ共~! こいつらも美波神邏のように捕らえ、拷問に……」

「ちょっと待てよ殿下」


 葉隠が口を挟む。

 なんだ邪魔するな! と、言いそうになった密則だが……はっとする。


 葉隠は神邏が容疑者と聞かされ、それを信じて密則にしたがった。だから神邏を助けようとする西園寺達と戦うはめになったわけだ。

 

 だが、神邏が冤罪だというのなら、西園寺達と争う理由はない。

 無実の罪を着せられた少年をはめるつもりなど、彼にはさらさらないのだから。


「どういう事だ。あいつも修邏みたいに天界を裏切ったって話じゃ」

「パンドラ!」


 もう言い訳は無理だと判断し、パンドラに助けを求める密則。


 するとパンドラは予想外の行動に出る。


 奴は葉隠……ではなく、なぜかボディーガードと戦っている。南城の元に、そして……


「――!? なんだてめ……」

「まずお前からだヨ。ガキ」


 パンドラは鋭く、長い爪で南城の腹部を貫いた。

 南城はその行動に全く反応できなかった……


「がっ……は!」

「まず一人ぃ……」


 爪を引き抜くと、南城は大量の吐血と腹部からの出血で倒れる。


「「南城!」」


 西園寺と水無瀬が叫ぶ。

 すぐさま西園寺はパンドラの元に走り、斧を振る。

 パンドラは不適に笑いながら軽く避ける。緩やかに……


「水無瀬! お前は美波の所に行け! ここは任せろ!」


 と、西園寺は倒れた南城の前に立ってから叫んだ。


「この魔族はお前らが相手にできる奴ではねえ! だから任せて先に行け!」

「え、でも」


 死にかけの南城。そして負傷してる西園寺……二人を見捨てて行くのは少し気が引ける。

 もちろん神邏の身が心配で気が気ではないが……


「行け!」


 西園寺の必死の形相。

 水無瀬は頷き、走り出す。


「止めろお前らあ!」


 密則のボディーガード二人が水無瀬を止めようとするが、


「邪魔だ!」


 西園寺が二人を瞬時に殴り飛ばす。たったその一撃でボディーガードは地に沈む……


 あまりの一瞬の出来事で唖然とする密則。

 ボディーガードは密則直属。それ相応の実力者だ。なのに西園寺に一瞬で叩き潰された。


 葉隠を抑えた事といい、学生のレベルをとうに越えてる……


 水無瀬はそのまま密則を軽く蹴り飛ばす。そのまま素通りするのは彼女の怒りが許さなかったようだ。


「ほんぎゃ!」


 情けない声をあげ、壁に衝突し、気絶。

 

 すると北斗が水無瀬の前に立ち、止めようとするが……


「邪魔よ裏切り者!」


 同じように水無瀬に蹴りとばさられる北斗。

 振り返りもせず、水無瀬は連れ去られた神邏の元に向かった。


 裏切り者。北斗にとってショックな発言だった。


 大好きな水無瀬からの拒絶……

 身から出た錆、北斗がやったことを考えれば当然の事。


 今さらながら、彼は自分のしてしまった罪を自覚する。


 もう水無瀬は北斗を許す事はない。彼女からの拒絶に、北斗は精神的ダメージを負っていた……



「葉隠、あんたもだ。自分のやっちまった事の責任……とれや」


 息を切らす西園寺の言葉……

 葉隠は軽く頭を下げ、水無瀬と同じく、神邏の元に向かった。


 これで残るは負傷した西園寺と、パンドラとその配下のみ……


「で? お前はどうするヨ」

「知れたこと……てめえを始末するんだよ!」



 ――つづく。


「次回 悲劇」

 


 

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