第5話  名門出の少年

 西園寺に連れられ、生徒会室にやってくる神邏。ちなみになぜか水無瀬もついてきた。興味があるとかなんとか言って。


 西園寺はドアの前にたち、ドアノブに手を掛けようとするが、途中で止め、ドアから離れた。

 ――その瞬間、何者かが中からドアを突き破って外へと飛び出してきた!

 否、飛び出してきたきたものは痛みでうずくまっている。どうやら誰かに吹き飛ばされた衝撃で、ドアを壊して神邏達の前に飛び出してきたのだろう。自分から壊したのではない。


 西園寺はこの人物が飛んで来るのを予測して、ドアから離れたのだろう。

 洞察力?勘?それともまた別の?

 どちらにせよ、神邏が思った通り、西園寺はただ者ではないようだ。


 西園寺は倒れこんできた者の顔を見る。


「春上か。どうしたその様は」

「う、うう……すいません会長……」


 春上と呼ばれた男が謝る。関取のように太った大きな体格を彼はしていた。二メートルはあると思われる西園寺よりもさらにでかい。

 そんな男を吹き飛ばしたと思われる者が部屋からてくてく出てくる。


 燃えるような赤い髪。目つきが鋭く悪い、背丈や体格は年相応の中学生程度の少年だった。


「生徒会の役職持ちとかいうから、手合わせしてみたが、こんなもんか」


 少年は春上を見下ろすように言った。すると、


「てめえ!舐めた口ききやがって!!」


 他の生徒会の面々が少年を取り囲むが、少年は微動だにせずあくび。


「オレ様が気に入らんならいいですよ先輩方。束になってかかってきな。返り討ちに……」

「「やめろ」」


 西園寺の一言で、囲んでた生徒会の面々は一斉に彼を見た。


「か、会長……で、ですが春上が」

「おれ直々にスカウトしたのが気に食わず、先に喧嘩でも売ったんだろ?」


 西園寺の問いに春上は目線をそらす。図星のようだ。


「さすがだな南城春人。名門きっての天才だけはある」


 燃える赤い髪の少年の名前のようだ。南城春人なんじょうはると。彼もまたただ者ではないと察する神邏。


「西園寺、何度も言うが、オレ様は生徒会なんぞ入らねえ」


 先輩の、それも会長にため口きく南城に、生徒会の面々がまた動きそうになるも、西園寺が手で制する。


「同学年の天才が揃えば、切磋琢磨して鍛えるのにもいいと思うがな」


 同学年の天才……。南城意外にもまだそんな人がいるのか。そう神邏が思った時だった。


「なあ美波?」


 ……突然話をふられた神邏。

 その意味をすぐには理解してなかった。

 ……数秒後、はっとする。

 まさかもう一人の天才とは自分のことを指してるのかと。


 南城は訝しげに神邏を見る。


「見ねえ顔だ。……そいつがオレ様に匹敵する天才だと?」

「そうだ。試してみるといい」

「――え、西園寺さん?」


 神邏が聞き返すとすぐ、南城は動いた!

 常人離れした速度で炎の塊を投擲!さらにその後すぐさま神邏に殴りかかる!


 ――結果は、


「……おい。いきなり何だ……」


 神邏は炎を容易く避け、南城の拳を手でつかんで止めていた。

 南城の拳は火の魔力が込められてるゆえに、メラメラと炎に包まれていた。常人が掴んだら火傷じゃすまない。骨まで溶けかねない。


 しかし、神邏が掴んでる南城の拳に今や炎はない。神邏自身無意識だったが、彼の魔力によって南城の炎を鎮火させていたのだ。


 まったく魔力を扱えなかった少年が、兄の劣化コピーになったとたんこれだ。

 それを見た西園寺は目を見開き笑っていた。そして同時に思ったのだ。逸材だと。


 この二人は、翌年の自らの代わり、いや、それ以上の存在になり得るかもと……嬉しさで身を震わせていた……



 ――つづく。


「次回 生徒会のお仕事」

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