第13話 出番、来る
神邏達の学園は順調に勝ち進む。神邏の出番はないまま……
故に、観覧席の方々の話題は自然と……
「いやあ、西園寺くん率いる中等部、快進撃が止まりませんな!」
「すでに同じ学園の高等部は敗退してるというのに……これだけの後輩がいるなら西園寺くんの後も中等部が優勝候補ですかね」
「中等部ということは未来の高等部、学園の未来は明るそうですな! 学園長!」
そう話しかけられた白髪白ひげの老人はいやいやと、謙遜していた。
学園長……神邏は見たことなかった。
「ゆくゆくは未来の天界軍を担う逸材達なのかもしれませんな~」
「そうだと学園長として鼻が高いですよ」
「さすが天界軍養成校ナンバーワン! 素晴らしいですよ!」
そんな観覧席の面々に、他の学園の生徒達は苛立ちを見せていた。
「ちっ、どいつもこいつも西園寺の学園の話かよ! おれらをいないものとして見やがって!」
「今年もあいつらにやられるなんてごめんだぜ!」
鼻息荒い生徒達を横目にし、黄木の秘蔵っ子件、魔族のアゼルが言う。
「まあまあ先輩方。そういうのは実力で見せつけてやりましょうや」
「アゼル。とはいえ他の連中はともかく、西園寺に勝つなんて……」
「ならワイが西園寺とやりますよ。中堅と一緒にね」
中堅とは三番目に戦う者の事だ。先鋒が一、次鋒が二、中堅が三、副将が四、大将が五番目だ。
アゼルの学園の代表は四人。一人少ない。故に彼は中堅と副将をどちらもやり、勝ってみせると豪語してるのだ。
――副将は西園寺の策略で神邏なのだが……
「よし、任せるぞアゼル! 西園寺達の鼻をあかしてやれ!」
アゼルは頷いてみせた。
彼の顔には自信しかなかった。
♢
――そして時は来る。
神邏達とアゼル達の学園の試合が始まろうとしていた。
舞台は準決勝。
両校今まで一敗もせず三連勝。
互いに中等部なのに、恐るべき実力を見せていた。
観客としては高等部が不甲斐ないと思うものと、中等部がすごいと思うもので二分していた。
高等部には軍入隊が決まってるものもいる。不甲斐ないと嘆く者がいるのも仕方ない。
次元の違う西園寺は未だ試合に出てないのだから、西園寺相手だからという言い訳もたたないわけだし。
だが、無敗同士の中等部の対決、こうなるとそろそろ見ものと思える試合になるかもと期待感が出ていた。
実のところ試合のほとんどが圧勝。拮抗した戦いは今のところなかった。それでは見せ物としても面白くない。
故にこの大戦カードは期待されていた……のだが、
「勝者水無瀬!」
一戦二戦共に神邏達の学園の圧勝だった。
やはり西園寺率いる学園の方が上か……
誰もがそう思った。
――しかし次の試合だった。
「
「――ガハッ!」
中堅の試合、対戦カードはアゼルと南城。
今まで掠り傷一つ負わなかった南城が、アゼルの渾身の拳を腹に受け、悶絶していた……
渾身の一撃を放ったアゼルの右拳はドス黒い、闇の魔力に包まれていた。
観客席はざわつく。
『なんて魔力だ……観客席からも圧を感じるぞ』
『中等部でこの魔力、それも拳一つに集中できるコントロール……軍の幹部クラスじゃないとできない芸当だぞ!?』
『アゼル? 誰なんだあの子は? 情報は?』
話題は神邏達の学園から、アゼル一色に変わる。
それほど衝撃的な出来事だったのだろう。
これ程の人材は西園寺以来だと言わんばかり。最高司令の黄木の秘蔵っ子なだけはある。
黄木もまた笑みを見せていた。
「……野郎。なめた真似しやがって」
南城は腹を抑え、ぷるぷる震えながら立ち上がる。
「やめとけや。勝負はもうついたやろ」
「うるせえ!」
南城はアゼルめがけて火の玉を生成し、放つ!
――だが、アゼルはそれをいとも容易く握り潰して鎮火させる。
「野郎!」
さらに攻撃を仕掛けようとする南城だったが……
『そこまで! 勝者アゼル!』
と、審判が宣言した。南城は一瞬呆気にとられた。その後すぐに審判に詰め寄るため立ち上がる。
「オレ様はまだやれる!」
『10カウントだ。君殴られた後うずくまってたろ? その間にカウントを数え終わった。それに勝負はどうみてもついてる』
火の玉攻撃も倒れたまま放ったもの。10カウントは立ち上がらないと止まらない。
南城は必死でカウントが聞こえていなかったのだ。
納得いかない。
だが、ルールだ。南城は唇を噛みしめながらも従う。
――これで一敗。
と、いうことは?
「俺の……出番?」
神邏、初試合。
――つづく。
「次回 神邏対アゼル」
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