第9話  オレに順番を回すな

 神邏達は生徒会室に集められた。他の役員と共に。

 西園寺は会長席にふんぞりかえり、口を開く。


「学園同士の対抗戦の季節がやってきた」


 それを聞くと、周囲の役員達が騒ぎだす。


「ついに来たか!」

「腕が鳴るぜ!」


 皆やる気満々だった。


 未来の天界軍の戦士を育成する学園は、何もここだけではない。

 天界の各地に存在するのだ。

 そういった学園の代表者を集め、一年に一度練習試合、もとい対抗戦を行うのだ。


 大々的に試合は行われ、天界軍の幹部なども観戦におとずれるという。軍に自らを売り込むのにも、うってつけなわけだ。

 代表者故に、学園の顔に泥を塗るわけにもいかない。

 たかが対抗戦とはいえ、学園同士の意地とプライドがぶつかる本気の試合なのだ。


「ちなみに、去年はどこが優勝したんだ?」


 南城が敬語も使わずに問うと、西園寺は答える。


「我が学園だ」

「へえ? 流石は天界軍養成校トップなだけはあるな。何年も連続で優勝してんのか?」

「……何勘違いしてるんだ?」


 今の南城の発言に偽りはない。この学園は実力者を多数輩出してるエリート校だ。勘違いしてることなどないはずなのだが……?


「エリート校なのは、高等部。ここは中等部だろうが」


 と、西園寺は言った。

 確かに中等部だ。一応試験はあれど、エスカレーター式に高等部には上がれるようにはなってる。だが、中等部事態の成績は平均くらいだった。


 なぜそこで中等部の話題が出たのかというと……

 水無瀬が気づく。


「え、中等部と高等部で分かれて対抗戦してるんですか!?」


 西園寺は笑みを浮かべて頷いた。


 そう、学園対抗戦は中等部と高等部ごとに、代表者を集うのだ。

 

「え? となると、エリートの高等部先輩達を押し退けて、中等部の、この生徒会メンバーが優勝したんですか!?」

「そういう事だ」


 流石に衝撃的な事実だった。

 高等部の代表者ともなれば、天界軍に入隊決まってるようなエリート達だろう。

 それを中等部の、入隊なんてできない小僧達が優勝をかっさらったなんて、水無瀬にはとても信じられなかった。


「ほぼ会長の手柄でゴワスがね」


 役員の実力者、春上が補足した。


「おいどん達幹部の春夏秋冬組も頑張りはしたが、流石に年上のエリート達、一筋縄ではいかんかったでゴワス。でも試合形式は勝ち抜き戦。そこに勝機が隠されてたでゴワス」


 勝ち抜き戦……代表者が負けるまで、連戦していくルール。


「代表者は五名。例えばおいどん達が相手一人に四人抜きされても、大将にいた会長が、敵を五人抜きすればおいどん達の勝利だったでゴワス」

「つまり、最強の西園寺会長が大将で控えてたから優勝できたと?」


 春上は満足そうに頷く。

 神邏も、南城も、水無瀬も納得できた。

 西園寺は強すぎる。例え相手が高等部のエリートだろうが関係ない。大将にこの男がいる限り、中等部だろうがこの学園が優勝するのも当然だろうと理解した。


「だが前年やりすぎてな……ほぼオレが敵の代表者叩きのめしての優勝だったからな。物言いが入った」

「物言い?」

「互いの代表者の切磋琢磨した試合が見たいのにオレの無双では意味がないとな。故に、今年からは勝ち抜きは撤廃の団体戦。最大五試合で、先に三勝したほうが勝ちのルールに変更になった」


 それはつまり、西園寺が一人で全員倒す戦法が使えなくなることを意味する。

 一試合に西園寺は一度しか出れないからだ。


「まあ、当然のルールだろうな。高等部連中も、三年連続で中坊に負けたくないだろうしな」


 三年連続ということは、二年連続、ここの中等部が西園寺の力で優勝してるということになる。

 神邏はますます西園寺の実力の恐ろしさを実感した。伊達に中等部卒業時点で天界軍入隊が決まった人ではないと。


「そうなると、今回はオレ一人で優勝はできねえ。他の四人の実力もほしいところだが……」


 西園寺は立ち上がり、神邏の肩に手を置く。


「オレは一応、五番目の大将の座につく。お前は四番目の副将の座につくんだ。……そして、」


 西園寺は不適に笑い命令を出す。


「オレに試合の順番を回すな。一番目から、四番目のお前で全試合三勝してみせろ」



 ――つづく。



「次回 無理難題」




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