操作
あなた方はカフェで一段落した後、再度スマホを見てみるとまだ『now loading』画面のままでした。
「持って行こうぜ。後で警察にでも届けておけばいいって。俺がバイトしてるとこもさ、こういったデカいチェーン店は貴重品とかは特にその店に預けても、個人情報とかもあって責任取れないから取りに来たって渡せないし、そもそも受け取れないんだよ。全部警察に届けるし、俺らも警察に行けって言われるだけだよ」
友人はそう言ってスマホをあなたに手渡してきました。なぜか全権があなたにあるようにしてくる友人のそういった所を昔から気に入らなかったが、この場は素直に受け取ってカフェ店を後にします。
「どうする?」
友人は答えることも無く車のロックを解除し、いこうぜ、と言わんばかりに親指を車へと向けて颯爽と乗り込みました。あなたも助手席へと小走りに、片手には黒いスマホを持ちながら乗り込みます。
友人が車を切り返している間、手にしたスマホの画面を見てみると
「・・・あ」
『now loading』画面は終わっていて、画面は横表示になっているのであなたスマホを横にしてよく確認して見てみると、そこは森の中のようでした。
「なぁ、画面、映ったわ。森?公園かなぁ」
「え、マジで?じゃぁ、カラオケでも行くか」
あなたは直ぐに警察には行かないのかと少し思いましたが、確かにこのスマホの今後も気になったので制止することは無く従います。
「・・・で?なんか動かせんの??」
友人は急かすように、フロントガラスの前方とスマホの画面を何度も見返します。
「ああ・・・・・・」
あなたは何とか分からないなりに、やったことのあるゲーム操作のように画面の右にある矢印をタップしたり、ゆっくり前方へスライドしたりして見ますが、画面は動きませんでした。左上に薄く、ボタンのような表示があったのでそこをタップしてみると、少し遅れて画面は大きく揺れ、今度は画面が縦表示になりました。あなたはまた追いかけるようにスマホを横から縦にして、様子を伺う。
「動いたわ・・・けど、どうすんだ??」
縦表示にすると、画面の下に上部のボタン表示と同じく薄く前後左右の方向を示す部分が、まるで一人称のFPSゲームのようにベストな配置で重なりました。このアプリは縦表示で扱うのが正しいことが分かった。
試しに前方の矢印をタップすると、三秒ほど遅れて画面が進んだような動作を開始する。
「あ、多分・・・いけた」
「おお、がんばれ」
友人は運転をしながらだが、あなたに期待をよせた言い方をしてきました。
「これ、結局ゲームなのか?マジで実写みたいな画面だぜ。あの、声を出すと直ぐGAME OVERになる、なんとかSCREAMっていうPCゲームみたいな」
「あ、それ知ってる。ゲーム実況者のYouTube動画で見た事あるわ。あれスマホアプリでも出てたの?めっちゃやってみたい」
「俺いま全然、普通に喋ってるけどスタート地点には戻らないから違うと思うけど、でもグラフィックとか雰囲気はあれにマジ似てるわー。でも動きはめっちゃカクカクで反応誤差、レスポンスはめっちゃ遅い。しかもなんか一歩づつみたいな感じでイライラする。このどこのだか分からないスマホのスペックがショボいのか、動作が重いのかも。データはアプリすら何も無さそうなのにな。結構、古いんか?」
「・・・あ、あれかな。もしかして、これって要はマッチングアプリなんだよね。これ、歩いてるのが女の子でさ、その場所を俺らが当てて行けってことなんじゃないの?ほら、ストリートビューで場所当てるGeoなんとかってゲームとかもあったじゃない?あんな感じのを活用して混ぜたやつなんじゃないの??」
「ああ、そんなのもあったねー、それは俺やったことないけど。でも、わざわざスマホ一つ犠牲にしてまで?」
「ほら、この辺、町おこしついでみたいに『街コン』ってやってたじゃない?俺らも大学ん時にやってたさ」
「ああ、そういえば参加したことあったなぁ。んで、あの時は相席居酒屋でただ奢らされただけだった」
「まぁまぁ・・・で?ちょっと色々周辺歩いて探ってみといてよ」
「ああ・・・・・・」
あなたは反応にイライラしながら根気よく森のような場所をウロウロと歩かせてみました。すると
【ポイントが足りません。チャージするか、お友達を紹介して下さい。】
「・・・ああ、終わっちゃった」
「ええ??」
友人はカラオケショップの駐車場に停めながら困惑した表情をした。
「なんか、ポイント制みたいだ」
「あー、あるあるだなぁ」
「そーなの?」
あなたはマッチングアプリを使ったことが無かったので、仕組みが分かっていなかった。
「登録時に何ポイントかあって、チャットか何かやり取りするとポイントが無くなるんだよ。でも、紹介だけでポイント貰えるなら良心的だな。お前、登録しとけよ」
「ええ、なんでよ。お前がしろよ」
「別にいいよ」
友人は特に気兼ねなく登録を始めました。
「こういう時の為のステアカってお前作ってないの?」
「何それ。そんなの無いよ」
「ってか、今どきポイント制ってのも古いけどな」
「なんか詳しいな、お前」
「まぁ、暇潰しだよ・・・はい、100ポイント入ったってよ。紹介された方は150ポイント入るんだって」
「へぇ・・・一歩、歩かせると、1ポイント減るみたいだな」
「そんなのいいから、場所、分った?」
友人に催促され、あなた方はスマホ画面にくぎ付けになりながらプレイヤーを動かしていきます。
「・・・ってかさ、どんな心境で相手はこんな地道に歩いてんだよ。頭おかしいだろ。やっぱりこれただのゲームなんじゃね?」
「自分の首ってか、視点とか動かせない系?」
「・・・右上これかなぁ。さっきは何も反応無かったんだけど、さっきは横になってたからかも。・・・あ、動いたわ」
「・・・あ、下した、下に向けてって・・・この服装、ほら、左の子じゃね?」
「左って・・・さっきトップ画面の?」
「おお。この胸まである茶髪の髪色とさ、トップスの服の色も同じだぜ。ああ、おっぱいでけぇ・・・・・・」
確かに色や肩紐の感じは似ている。けど、あなたはどうしても信じられませんでした。それに画面からは異様な雰囲気があって、少し気味悪く感じていた。
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