欲望
《食べたい。みんな、楽しそう》
え?・・・あ、食事の風景だね。へぇ、そんなのに興味があるんだぁ。
《みんな、一番いい顔。楽しそう。特に、この食べ物・・・・・・》
ああ、これはケーキだね。白くて甘い生クリームがフワフワのスポンジを覆い、赤いイチゴが可愛く乗っているね。スポンジの間にもイチゴとクリームが挟まっているんだよ。・・・お腹が空いたの?
《いや、そういうわけじゃない。色んなデータを見る限り、人がみんな幸せそうにしている確率が高いのが、食事だと思う》
ああ、そうだねぇ。僕はあんまりそういった欲はないけど、そうかぁ、あなたの当面の『夢』は、誕生日パーティーだね!
《誕生日・・・・・・》
僕は食欲の方はいまいち分からないけど、誕生日と、友達や仲間との何かの共有は分かるよ!そもそも僕たちは特に誕生日が分からなかったりあやふやだもんね。
《・・・SEXって・・・なに?》
おいおい、それは自分で勉強してくれ。いっぱい動画や資料があるだろう?
《なんだか、頭では、モヤモヤする。フワフワする。どう言えばいいのか、わからない・・・・・・》
んー、困ったなあ・・・僕ではどうしようもないから、一応上司に報告しとくね。博士がなんとかしてくれる・・・かも?・・・えへへ。
《恋・・・とは?》
ああ、それなら任せてくれ!
種によっては様々な繁殖方法を取る。求愛ダンスや、身体の模様や色合いで異性にアピールするんだ。視覚だけじゃない。フェロモンという嗅覚にうったえたり、鳴き声で囀り聴覚へうったえたり。時には体の一部を光らせたり、同種と戦い強さを測ったり。より優秀な子孫を残すための「儀式」みたいなものさ。
人間はそれがより複雑、というか狡猾というか・・・まぁ色んな要素の複合体かな?外見で言うと、化粧をしたり、匂いを点けたり、着飾ったり、時には体を改造するようなパターンもある。
内面は色んなスキルを使うね。料理や知識、話術、時には洗脳や強制といった手段を取る。財力や権力という安心を武器にしたり、演技や虚偽を武器にしたり。
話をまとめると、子孫を残すための儀式として「結婚」という手法とルールを設立。恋愛という疑似結婚を楽しみ・・・ここは僕も不思議で謎なんだが、間違った結婚をしないための訓練、練習、ということなのかな?
しかし、そういった準備を多くしているにも関わらず、離婚という制度もあるんだ。新たな子孫を産むために再活動するのに、また儀式をするんだ。効率がいいのか悪いのか、僕にはさっぱり分からないんだなぁ。
まぁつまり『恋』とは、良い遺伝子を探るセンサーを磨くためのもの、ってことでいいんじゃない?どう?
《遺伝子・・・子孫・・・か》
そうだね!恋をして、様々な経験をして、僕らには一般的な親という存在がないけれど、僕らがこれから立派な「親」となり、そして『家族』を作るんだ!
《わたしと・・・あなたで?》
そ、そ、それはど、ど、ど、どうかな?まだなんとも・・・あ、あなたは、どう思う、の?ですか?
《わたしには、あなたしかいない。あなたには、わたししかいないのでは?》
んー・・・まぁ、いまのところは、そうだね・・・・・・
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