とんがりマスクの黒子

 鳥頭マスクの死神が通りすぎたと判断した操縦者は、頭のライトを灯して逃走を開始した。あなたは恐怖と痛みで憔悴しきり、茫然と行く末を見守ろうと、とっくに身体は支配されているが心までも操縦者に身を委ねる気持ちになっていた。


 物置部屋から出ようとしたですが、死神から逃げようと部屋の奥へと向かうぶつかった際に外れた、マネキンの手か足の部分パーツを踏んでしまい後ろへと大きく転倒する。皮膚下の痛みなどの感覚は無いあなたですが、衝撃が頭蓋骨や全身の関節や大腿骨に響き激痛が走る。どうやら体中に何かの部品や装置が設置されているようで、それで動かされているような事が痛みの部分で何となく感じた。腰や背中、頭部、膝や肘などに。



 転倒から数十分。



 どうやら倒れると、起き上がることが出来ない様でした。ずっとライトで照らされる錆びれた何も無い天井を見せられ、途方に暮れるしかない最中、微かに聞こえる聞き慣れたゲーム実況者の叫ぶ声が聞こえる。幻聴だろうか。凄く遠くでその動画を誰かが再生している。しかし音源は凄く近く、あなたの脳内から聞こえる。まるでスピーカーがあなたの中にあるかのように、頭蓋内で反響し骨伝導で聞こえてくる。


 友人とその動画を見て、いっしょに遊ぶゲームを選んだ記憶が思い出された。



 すると、眺めていた天井が


ズルッ・・・ズルッ・・・ズルッ・・・・・・



 上へ上へとスライドしていく。部屋から出され、またどこかの室内へとそのまま引きずられて運ばれていた。


《まさか・・・あいつに、見つかった?!》


 あなたは焦りました。抵抗が出来ない状態なのでどうすることも出来なかったが

「・・・うぅ・・・あぁ・・・やえお・・・・・・」


 何とか説得しようと、麻痺したままの喉と舌でなんだか分からない者とのコミュニケーションを取ろうと必死に声を出そうとするが、空しく天井が上部へと流れていく。





 画面が、グワン、と勢いよく起こされ、壁が天井と床との設置線を見て天地を把握した。誰かに起こされ立たされたのだ。


 左右からマントかポンチョかを纏った、全身が真っ黒の出で立ちで顔から頭部にまで真っ黒な全頭マスク。頭頂部は長くとんがった、その恰好は何かの映画で見たKKK団のようでしたが、真っ白では無い二名がその姿をあなたの前へと現せた。


 鳥頭マスクの死神に続き、また不気味で不穏で不安を狩り立たせる。


 二人はあなたの全身を目配らせ、ペンライトを持って隅々までチェックを開始した。あなたが見つめる右目にもそのペンライトを当てられ、眩しさで30秒ほどあなたは目眩ましを起こし、視野が正常に戻る頃には二名のとんがりマスクの黒子は忽然と消えていた。


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