「ライフ・オブ・ブライアン」(1979)

 モンティ・パイソンによるキリストの物語をパロったコメディ作品である。発表当時(1979年)の世相を反映しながら、パンチの利いたネタを披露する。キリスト教そのものへの風刺ではなく、安易な救済を求めてしまう人々の姿を痛烈に風刺している。


 古代ローマの時代、三賢者がユダヤ地区にある一軒家を訪ねてくる。幼子を祝福したいという男たちを、母親は怪しがって帰そうとするが、黄金や没薬もつやくといった贈り物をもらえたので歓迎する(没薬ってなに?)。

 しかし、三賢者は間違えていた。彼らの目当ては、ブライアンの隣家のイエス・キリストだったのである。そういうわけで、一度は与えた贈り物を母親から奪い返す。


 成長したブライアンは、コロッセウムの客席でおやつを販売する仕事をしている。その際、ユダヤ人のローマ抵抗団体である「ユダヤの人民戦線(PFJ)」の人たちと出会い、活動に興味を抱く。父親がローマ人だと聞かされたブライアンは、ローマに怒りを持っており、何らかの抵抗をしてやりたかったのである。

 ちなみに、「ユダヤの人民戦線」は同じユダヤ人組織である「ユダヤ人人民戦線」「ユダヤの民衆戦線」をローマ人以上に憎んでおり、混同しないようにと注意される。


 晴れてPFJに入団したブライアンは、ピラト総督の女房を誘拐するという作戦に参加する。地下のトンネルを抜けて行った先で、PFJは「ガラリヤ解放運動」なる組織と鉢合わせ。彼らが自分たちと同じことをしようとしていると知り、殴り合いをはじめる。

 協力したらいいじゃないか! ブライアンの声も虚しく、騒ぎを聞きつけたローマ兵に彼らは捕まってしまう……。


 また、とある勘違いからブライアンは民から聖人扱いされてしまう。彼の残したものは、なんでも聖遺物である。

 なにか言葉を求められて、ブライアンは彼らを批判する。「自分の頭で考えろ」「君たちは独立した個人だ」「それぞれに違う」「自分で考えて答えを見つけるんだ」。

 だが、人々は斉唱する。「自分の頭で考えろ!」「我々は独立した個人だ!」。」「それぞれに違う」「自分で考えて答えを見つけるんだ」。そして「もっと教えて!」と要求するのである。


 ラストを飾るエンディングテーマは、「Always Look on the Bright Side of Life(いつも人生の明るい面を見よう)」。キャッチーさと口笛の響きについ口ずさんでしまうことは間違いない。いつも人生の明るい面を見よう。死刑台にかけられた者たちが歌うにしては、皮肉のきいた話である。


 本作には、こうしたイギリスらしいブラックでナンセンスな笑いで満ちている。ここで描かれるのは、安易な救済を求めてしまう人たちの愚かさなのである。

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