「NOPE/ノープ」(2022)
わたしはあなたに汚物をかけ、あなたを辱め、あなたを見せ物にする(ナホム書第3章6節)
宇宙船モノである。
タイトル「NOPE」の意味は「ありえない」。意味不明なものを見た時につい口をついて出てくる言葉だ。監督は「ゲット・アウト」「アス」で知られるジョーダン・ピール。宇宙船を題材としながら、打ちひしがれた男が尊厳を取り戻す痛快なエンターテイメントになっている。
地球に謎の宇宙船がやってくるというテーマは昨今では珍しい気がする。いわゆるファーストコンタクトものというやつだ。「未知との遭遇」「ET」など過去にはそうした名作は多い。
いまやUFOが飛来してくるという話は時代遅れなのかもしれないが、「NOPE」は斬新な宇宙人造形とストーリーで新時代のファーストコンタクトものを作り上げている。
代々馬牧場を営む一家のもとで育ったオーティス・ジュニア(OJ)。牧場では、ハリウッド映画の撮影に馬を貸し出したり、興業に出演させたりしている。父オーティスの強い影響力のもと、一家はその基礎を築いてきたのだが、その父が急死してしまう。とつぜん空から落ちてきた飛来物に頭部を貫かれたのだ。貫いたのは一枚のコインだった。
父親のような機転に欠けるせいか、OJは牧場主としてうまくいかず、愛する馬たちを手放す憂き目にあう。
そんな折、OJと妹のエメラルドは夜空にUFOが浮かんでいるのを目撃する。世間はUFOの話題で持ちきりになっており、撮影したものには高い懸賞金が用意されている。エメラルドの強い勧めもあり、OJはUFOを撮影することで、一攫千金を狙おうとする。
本作にはエイリアンが出てくるわけだが、そのビジュアルは斬新の一言。
エイリアンと対峙する兄妹の機転の利かせ方には感心させられるし、ラストに見せる兄の勇敢さは胸を熱くさせられる。いつだってトラウマを乗り越えるためには、トラウマに直面するしかないのだ。それこそが物語であり、物語を読み解く者たちにとっての人生の指針である。
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