「ジェイソンX 13日の金曜日」(2002)
「不滅の肉体をもった連続殺人鬼」といえば、われらがジェイソン・ボーヒーズ(もちろん『ハロウィン』マイケル・マイヤーズも忘れてはいけない)。不滅の肉体なら、遠い未来に生きててもおかしくないよね。
というわけで、スペース・オペラ的な未来世界でジェイソンが大暴れする。全編を貫くのは、すっとぼけたギャグ。宇宙空間でさらにパワーアップしたジェイソンが見るものを襲う?
実際より少しオーバーテクノロジーな2000年の「クリスタル・レイク湖」から物語ははじまる。
とある施設で、殺人犯として囚われたジェイソンの研究が行われていた。この不滅の肉体をもった連続殺人鬼を持て余した研究所は、『未来永劫冷凍保存するという方針』をとる。
それにも関わらず、「失った組織を治すという特性を持った彼の生の体がほしい」とウィマー博士が主張し、ローワン女史(本作のヒロイン)と対立する。
しかし、このときにはジェイソンは逃げ出していた。待ちぶせて、ウィマー博士を殺害。ローワンはからくもジェイソンを極低温装置に閉じ込めるが、自分も冷凍保存に巻き込まれてしまう。
ちなみにウィマー博士を演じるのは、ホラー監督のレジェンドのひとり、デヴィッド・クローネンバーグである。
それから455年後、宇宙船の乗組員たちによって、ローワンは見つけ出される。一方、乗組員たちはジェイソンは「死んでいる」と判断される。検体として解剖することに。
蘇生したローワンは未来世界に動揺する。彼女がいたのは輸送船グレンデルのなか――人類は宇宙に進出していたのだ。
グレンデルの乗組員は、アンドロイドのKM、その製作者のツナロン、軍人のブロッドスキー、セクシーなジャネッサなど個性的。
手術室では、ジェイソンの解剖が行われていた。とうとうジェイソンに科学のメスが入るというわけだ。
だが、ジェイソンは不滅の殺人鬼。死亡と判断された彼の体は立ち上がり、研究者たちを襲う……。
先述したように、これはギャグ映画である。
未来にいようが、宇宙船に乗ろうが、ジェイソンがやることはたったひとつである――つまりは連続殺人だ。
ジェイソンは、起き抜けに「さっそく殺人」。もうちょっと、注意深く周囲を観察するとかしようよ。だが、ジェイソンの
つづくシーンでは、宇宙船のなかでも若い男女がいちゃついてる。察しのいい人は次に何が起こるのか予想がつくことだろう。カップルがジェイソンのえじきになるというわけである。未来でも宇宙でも、人間・ジェイソンともにやること同じかよ!
……そういうわけで次々と乗組員が犠牲になっていく。
対抗手段として、未来世界の軍人たちがジェイソン討伐に向かうのだが、ことごとく打ち破られる。
アンドロイドがいる世界だから、サイバーパンク的に部分的にサイボーグになっていたりしないの? ――しません。
ジェイソンの鉈の攻撃を防ぐような頑丈な装備を着込んでたりしないの ――しません。
レーザービームとか瞬殺できる武器があったりしないの? ――しません。
というわけで、あっさり全滅する軍人たち。せっかく未来なんだから、数々のSFガジェットとジェイソンを対決させてほしかったのだが。
終盤では、ローワンと残りの乗組員は限られた状況下で、ジェイソンと対峙することになる。果たして逃れるすべはあるのか……?
その後、「デウス・エクス・マキナ」的な存在がジェイソンを圧倒したり、ジェイソンが謎のパワーアップを遂げたりと見どころ満載。
終盤は、生きるか死ぬかで手汗握る展開もあり。「エイリアン」にオマージュを捧げるかのような「猫を救う」ワンシーンも。
個人的には、キャラクター設定が細かく行き届いているところに共感。軍人やクルーが辛口を叩きあう何気ない瞬間に、ちょっとした人間関係がかいまみえるのがいい。
退屈しのぎにもってこいの一作。おすすめです。
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