「TALK TO ME トーク・トゥ・ミー」(2022)
深淵をのぞいたような心地になった。これは心をえぐってくるようなホラー映画だ。これを書いている今も震えが止まらない。
女子高生のミアは一年前に母親を失っており、母の死について何かを隠している父親を憎んでいる。幼なじみのジェイド、ライリー姉弟やその母とのなかは良好。そんな折、「憑依」という行為に出会う。
噂の〝降霊会〟に招かれて、ミアは「憑依」に出会う。使われるのは、切断された霊媒師の手を
ミアと仲間たちは「憑依」に夢中になり、厳しいジェイドの母親の目をかいくぐって、繰り返す。そのおかげで、ミアの人生は楽しくなる。しかし、幼いライリーが「憑依」をやりたいと言ってからすべてが壊れる。なんとライリーが出会った幽霊は××だったのだ……。
本作の「憑依」は、間違いなく「麻薬」のメタファーだろう。妙に秘密めかしたところ、大人の目をかいくぐって行われるところが、いかにもそれらしく見える。霊魂が体内に入っている間は、自分が自分じゃなくなる感覚を味わい、それが得も言われぬ快楽になるのだ。ミアは仲間たちとカジュアルに「憑依」を繰り返し、めちゃくちゃハイになって盛り上がる。しかし、そこには罠が潜んでいたのである。
本作のねらいは「麻薬の危険性を啓発する」といったものではなく、「依存症」そのものへの警告だ。麻薬的なものは一時的には気分を和らげてくれる。誰しも生きていれば苦しいこともあるし、喪失を経験すれば普通じゃいられなくなる。誘惑へと手が伸びるのもいたしかたないところがある。だが、のめり込んだ先に待っているのは地獄ということもあるのだ。
監督は、ダニー&マイケル・フィリッポウ兄弟。なんとYouTuber出身。降霊会のシーンでは誰しもが当たり前のようにスマートフォンのレンズをかざすという光景が見られ、これはいかにも現代的な感覚に思える。かと思えば、ヒッチコックの「めまい」を彷彿とさせるカットが挿入される。新世代の監督ならではの、新感覚の映像が堪能できる。
目新しさばかりではない。ホラーとしてしっかりと怖い。唐突に現れる霊にはきっとびっくりさせられるだろうし、闇にうずくまる幽霊がぬうっと起き上がってくるところは絶叫してしまうだろう。YouTubeの動画編集で磨かれたであろう監督の手腕にいつの間にか虜にさせられることを請け合う。
恐怖と快楽――その先にミアが何を見たのか、見届けてほしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます