「テリファー 聖夜の悪夢」(2024)

「テリファー」シリーズの三作目は、オープニングからして容赦なかった!

 オープニングに登場するのは、クリスマスを迎えたとある一般家庭だ。一家の幼い女の子はサンタクロースを待ちわびている。その時、屋根の軋む音がする。母親が玄関にいくと、扉が開かれていた。何者かが中に? ……そして姿を現すのは、もちろん我らが連続殺人ピエロのアート・ザ・クラウン。子どもに危害が及ばないのはホラーのお約束だったりするが、のっけからそれをへし折る姿勢を見せる。毎度のことながら、閲覧要注意なシリーズである。


 まさか近くの劇場で本作を見られるとは思わなかった。「知る人ぞ知る」ホラーであった本シリーズも、フタを開けてみれば全米ナンバーワンのヒット。日本でもお笑い芸人がPRに参上するなど、ちょっとした話題になっている。

 メジャーになると持ち味が抑制されることがあるが、「テリファー」に関してはその心配は無用。キッチュでスプラッタな作風を殺すことなく、背筋の凍るような恐怖を展開する。独創的な殺人描写のオンパレードに、思わず「人の心ないんか」と言いたくなるようなシーンも多数。やっぱりあのネズミはヤバいでしょ……。


 なかなか死なせてくれないところが、本作のホラーシーンの特徴である。並みのホラーならズドンと発砲して即死で終わらせるところを、本作ではぎりぎりまで生かしてしまう。結果、被害者は死ぬよりもつらい目にあうことになる。アート・ザ・クラウンは被害者に極限まで苦しみを与えるのだ。これには拷問ホラーのおもむきもある。いうなれば、スプラッタ映画と拷問映画のハイブリッドか。


 ストーリーとしては、二作目のヒロイン・シエナが再登場。連続殺人事件かつ超常現象のサバイバーとして精神安定剤を手放せない日々をすごしているシエナ。そんな彼女を家族の一員として迎えるのは叔母のジェス、叔父のグレッグ、それからその娘ガビー。温かい家庭に迎えられるが、過去の亡霊がシエナを苦しめる。

 ある日、ガビーを連れてショッピングモールに向かったとき、そこでシエナはアート・ザ・クラウンの気配を感じ取る。弟のジョナサンに連絡をとるが、ジョナサンは学生として新しい生活をスタートしたこともあり、シエナの話に半信半疑だ。

 シエナが生活の問題で苦しんでいる瞬間にも、アート・ザ・クラウンと相棒のヴィクトリアは刻一刻と近づいてくる。多くの人間たちに叫び声を挙げさせながら。


 ホラーシーンだけではなく、終盤には手に汗握る展開も。「んなわけあるかい」というツッコミ入れたくなるシーンもあるだろうが、それは御愛嬌。

 前作を見ていなくても、十分なくらいシエナの苦悩が強調されているので、これを機にシリーズを見始めるのもいいかも。




※前作「テリファー 終わらない惨劇」(2022)の感想はこちら

https://kakuyomu.jp/works/16818093075080597640/episodes/16818093076713596885

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