花の夢を見たんだ

　祭りが近づく山奥の星降る町・石雪へ行商に出かけた神社育ちの登与は、実は天狗だという押しかけ女房と共に行方知れずになったと言い伝えられる刀鍛冶らしき男が現れては消える廃屋に滞在することになった。
　しかし怪異はそれだけではなく、山の中を歩けば天狗が現れたり、異界の奥にある賽の河原に迷いこみそうになることも。屋敷も異界に包まれることがあり、さらには都の術者集団‘月烏’まで登与に屋敷に咲く白い花を探せと迫ってくる。
　中庭の石の前に座り続ける男の不器用な優しさや押しかけ女房との日々に触れ、家に居場所を見つけられない町娘・久江とふれあいながら祭りの日を迎え、登与は手製の小物を売るのに精を出す。
　だがそんな彼女を、‘月烏’の頭のたくらみが襲ってきて――――。



　※夏目漱石の「夢十夜」より「第一夜」を題材にしました。