概要
ある朝、眠るように意識を失った彼女が目覚めたのは――見知らぬ異世界だった。
名も知らぬ草原の風、やさしく名前を呼ぶ“家族”。
「アン」として迎えられたその世界に戸惑いながらも、少しずつ心を解きほぐされていく。
彼女はなぜこの世界へ転生したのか?感じる不思議な能力の正体は?それはアシェリラ様のお導きなのか。
愛を知った少女が、ゆっくりと、それでも確かに世界に愛と豊かさを広げていく、再生と希望のスローライフ系ファンタジー。
※表紙イラストは以下の近況ノートをご覧ください。
(森野 狐様にご制作いただいております。)
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!静かな光が織りなす心の風景
絶望の淵に沈んでいた主人公が、新しい世界で心を取り戻していく。
そんな再生の軌跡が、特別な奇跡としてではなく、何気ない日常の温もりの中に丁寧に見出されていく物語。
心をすり減らし、感情さえ薄れてしまったヒロインのアン。
そんな彼女が異世界で出会った新しい家族――姉のセラ、弟のティム、母親のマーサ――との暮らしの中でふと涙を流す、その瞬間が心を揺さぶります。
動物に触れたときの不思議な感覚や、それに寄り添うティムの言葉にならない優しさ。
失われた感情が少しずつ満たされていく過程が静かに描かれていきます。
家族の何気ない会話や食卓を囲む時間、そういった日常の描写のリアル。
特別な事件が起きる…続きを読む - ★★ Very Good!!だんだんと色づく、救済の物語
あまりに過酷な家庭環境にいた杏奈。
ある日、夢で見た草原で目が覚める。
そこでの呼び名はアン。
あたたかな家庭から突然行方をくらました愛娘だったという。
望まれぬ子だった境遇から一転、誰からも再会を願われた子へ。
優しい人々に囲まれた彼女は――――
本作の魅力は心情描写。
杏奈は心を押し殺し続けた結果、自分が何を感じているかすらわからない。
そこからゆっくりと、手探りしながら感情が動き始める推移が本当に見事。
渇ききった土に水をやるような文体は、読者の心にも沁み入ることだろう。
世界観も外せない。
日々の出来事はパステル調といった雰囲気で、ただひたすらに柔…続きを読む - ★★★ Excellent!!!封蕾 鈴ノ音触レテ 筆芽吹ク🐣
スズランの花言葉は「再び幸せが訪れる」「純粋」「希望」です。杏奈が異世界で新たな家族と出会い、心を取り戻していく過程は、まさにスズランの花言葉と重なります。また、スズランの可憐で控えめな姿は、杏奈の繊細な心情や、物語全体の穏やかな雰囲気を象徴するのにふさわしい花だと思い詠みまみた。
注釈
封蕾(ふうつぼみ):閉ざされたつぼみ=主人公の凍った心、あるいはまだ咲いていない感情。
鈴の音触れて:スズランの音、あるいは優しい出会いや家族の声のような“外からの癒し”。その音が主人公に「触れる」という表現、心の距離感。
筆芽吹く:創作の芽生え=再び誰かと繋がりたい気持ち、自己表現、あるいは未来への…続きを読む