だんだんと色づく、救済の物語

 あまりに過酷な家庭環境にいた杏奈。
 ある日、夢で見た草原で目が覚める。

 そこでの呼び名はアン。
 あたたかな家庭から突然行方をくらました愛娘だったという。

 望まれぬ子だった境遇から一転、誰からも再会を願われた子へ。
 優しい人々に囲まれた彼女は――――


 本作の魅力は心情描写。

 杏奈は心を押し殺し続けた結果、自分が何を感じているかすらわからない。
 そこからゆっくりと、手探りしながら感情が動き始める推移が本当に見事。
 渇ききった土に水をやるような文体は、読者の心にも沁み入ることだろう。

 世界観も外せない。
 日々の出来事はパステル調といった雰囲気で、ただひたすらに柔らかい。

 大いなる秘密が動き出す気配もあるが……今のところはこの陽だまりを享受したい気分。
 癒しを求める人には特にオススメする。

 
 お星様は続編を期待しての二つ。
 残る一つは、いずれ完全に締めくくられた日に改めて。

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