Failure Mode ~フェイルモード~.2
「
姉の姿が奥に消えたタイミングで、妹の
そこでセレグレーシュが困惑に
「うん……。なにも入れなければ、組めるんだけど、入れると
「…《
「うん…」
(…次の段階に進んでいるみたいだから、できたんだなって思っていたけど……できていなかったんだ…)
エアリア妹は、もの思わしげに思案しながら、ちろりちろりとセレグレーシュの反応を盗み見た。
「…
思いもしていなかった指摘に、セレグレーシュが
「道具や陣形が変わっても、そうなのでしょう?
セレグレーシュが、じっと言葉に耳をかたむけていると、そのまっすぐな視線を意識したのか…。はたと表情を変えたエアリア妹が顔を真っ赤にして身ををすくめた。
「ごめんなさいっ。でき…、たんだよね?」
「というか、
「わたし、法印技術には明るくないのに、
なにかわからないが目の前の女子がいいように困っているように見えたので、セレグレーシュは、てきとうに思いついた事情を提起することにした。
読み切れていない場の
「自分でも、なんでって思ってる。でも、素材や空間分析、計算の段階でなにか勘違いしているのかも知れないし、配分、構成……基礎から見直してみる(数値バランスは、その
この課題には、けっこうな期間を
彼が努めて深く考えないようにしながら、素のままの言葉を繰りだしていると、どこから耳をそばたてていたのか、戻ってきたエアリア姉が事態を持てあましている妹を、ちらと視界に収め見てから
「でも! レイス君は、そっちが得意なんでしょう?」
指摘されたセレグレーシュは、発言者に目を向けた後、どう応じるでもなく、そのまなざしをより近い自身の胸の前の低空に泳がせた。
はっぱかけられているようでもあったが、
(得意っていうか……実技に比べれば、かなりすんなり進めてる感覚はあるかな……。そこで間違えてる気がしなかったりするのも確かで。でも、
彼が
自身がつかみとったものを否定するつもりはなくても、上には上がいる。
だれにだって得意不得意・好き嫌い・適したペースがあるものだし、それと伸びが認められる事柄にも、見えない局面、癖や盲点をいくつも
どこまでも教示を受ける立場にありながら、目指す効果を現実にできていないというのが
「これは訓練用だもの。式や手順は、心力
放置されている小さな
「力
導きだした答えに自信があるのだろう。自分の発言に満足して見える。
「ジーちゃんが、法具以外のことで熱心になるなんて滅多にないんだから、その貴重な意見と想いを胸に留め置いてくれないかな?」
「もう、ラパ姉さまっ!」
エアリア妹が、むっとした顔で姉を抗議して「違うって言ってるのに…(よけい、意識しちゃうじゃない……)」とか、小声でぼやいた。
ともなく、うつむいたその彼女が、視線を伏せたままセレグレーシュの方へ体の向きを変える。
「忘れてくれていいの。どうか忘れてちょうだい。生意気言いました!」
「生意気って、なんで? 法印士じゃなくても法具士で、キャリアが違う。君らの方が断然
なぜか持ちあげるほど、
そこで姉の方が、先刻カウンター
「
これと提示されているのは、ひと抱えもある白い平箱(十二インチのピザ箱風味)と、一片が二〇センチほどある
「はい、これはおまけ」
そこに折りたたまれた瑠璃色の布地が追加された。
薄手のかなり軟らかそうな素材で、その組成に、ちらちらと主張があまり強くない銀色の点状のひらめきが見てとれる。
いっけん、ただの布地のようでも、そうであることを包み
「……。もらって、いいの?」
「いーのいーの。くれるものは、もらっておきなさい。あげられないようなものはあげないし、役にたつかもわからないのだしね。心配しなくても贈り物だから、お代はとらない。こんなの、ちょっとした野暮無粋よ。それだけ苦労し(て造っ)たのなら、自分で渡せぇ! って、叫びたくもなっ
(…野暮無粋で……自分で渡せって、なんだ?)
セレグレーシュが相手の発言を把握しきれずに目を丸くしている。
そんな彼のとなりにあって。姉の
「これは……心力で効果的に
「うん。ありがとう」
くれた相手? と助言をそえてくれた相手。どっちがどっちなのかもわからなくなったが、セレグレーシュがどちらにともなくまとめて礼を
うなずいているともとれるしぐさだ。
そして、意識的に落ちつきをはらいながら、彼女自身の考えを追加補足する。
「学力面……必要心力、制御、鑑識力で
「うん……」
真に受けてしまっていいものか……
かなり複雑な
あっちもこっちも、なんなのだろうと疑問を
「ところで……レイス君は、来月
エアリア
「
あっけらかんと話す姉の言葉に、ぎょっと表情を変えた妹が、いきなりカウンターに飛び乗り、乗り越えんばかりの勢いで上体を
そうして伸ばされた腕が姉の肩をがっしり捕らえる。どうじに、その逆の右の手が捕まえた対象の口もとを逆手に
妹に跳びつかれて口をふさがれたエアリア姉がくぐもった声を発する。
「れぅ…ぅう……」
「なんでもない! なんでもないの」
けっこう幅のあるテーブルではあったが、対面受け渡しも可能な
その動作の中に妹が姉の耳元に「なんでそれ、言っちゃうの」と
「隠すことじゃないでしょう」
「隠したいの!」
「隠したって、いいことないと思うけど? 人づてに伝わることだってあるんだから、もう知ってるかも知れないし。そんなこと言ってたら、呼びたい人、誘えないよ?」
不興をあらわにして、むくれている妹を左に。
エアリア姉は特に
「とにかく、ちょっとしたお祝いするのだけど、レイス君も来ない? わたしはお祝いされる側だけど、お祝いする側でもあるし――」
煮え切らない
「後で招待状送るね? 談話室ひとつ
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