実 相.4
「オレとスミレは、スミレの母さんが強くて
情が
つなぐための作業だから、いちいち知る必要はない。オレたちが知ってはいけないこと。
必要ない知識で…――亜人は亜人、人は人。里に存在する《亜人》はみんな、やつらに作られた《里の守り》で……共有の財産。
口に出して言わなくても、生きた道具……家畜で…。
里を守るのが存在する意味で、そのために生まれたんだから、それが使命だって。
里人を大事にして、守れって。
(
(それが出来ないなら、
でも《
《
そのために作られたからだなんて……そんなの納得できなくて……。
〝なんで〟が消えなくて。どこが違うんだって……。
それでシナを困らせたけど、やっぱり言われるほど悪いことしてるとは思えなくてさ…」
(…〝シナ〟……)
何度か耳にしてる名だ。
セレグレーシュは、ならんで歩く白い少年を伏せ目加減に、ちらと視た。
「とにかくっ! オレが産まれたのは
「(…ひじりの情勢……)さっきから出てくる《ひじり》というのは、町か里? 国?」
「ん…。《
そいつらを
オレら、そっちの方面のこと、全部ひっくるめて《
《
いちおう、代表みたいなのがいる。《
悪いこと起きた時、その代表……《王》が人柱になるとか、それにも、よくわからない条件があるとか言って…――役目から逃れるための言いわけっぽいけど…。
とにかく、
おかしな感じに信じられてる特別な
でも、もう、ずいぶん前から、
いま、どうなっているのかわからない…。
オレ、
それでも
「ふぅん……(破魔系霊能者みたいなものを中心に構成された集団とか…?)」
セレグレーシュがさして本気になることもなく、聞いた情報を理解しようと
「おまえ、〝石と石が出会うと、力ある者が現れる〟って話、聞いたことないか?」
(――力ある者が現れる…って。それって、もしかして……)
それと聞いたセレグレーシュが、あてずっぽうな思いつきを胸に相手に注意をむけた。
自身の解釈と、耳にした言葉の意味の両方を危ぶみながらも、聞く姿勢を立てなおす。
「どんな石でもいいわけじゃなくて、中にいろんな色や光が見えたりする……ふだんは透明に見えるのに向こう側が透けて見えないやつと、《闇人
(白い方も)やっぱり、向こうが透けて見えるわけじゃないんだけど……闇人とか亜人を狂わせたり、力(を)
嫌な思い出でもあるのか、アレンは不快そうに表情をゆがめた。
「(オレの)里には…《クロウカシス》には、《
むかしから奉られている透明な石があったんだ。
《
オレたち《混ざり者》に反応して、色見せたり、見せなかったりする気まぐれなやつで、《
シナの話じゃ《
むかしは、もっと(たくさん)あったんだけど、《
「みたまさま…?」
「だから、里で
(石に似てるのか?)
見知らぬ無機物――生活機能(主に炭素)を持たない自然物に見えても、そうではないことがあったりするものだが……そういったものと似てると評価されても受けとめようがない。
指摘される理由……意味もわからなかったので、セレグレーシュはなんとも複雑で言いあらわしようのない心地にひたされた。
微妙な顔をして、進む方角に視線をすいっと泳がせる。
「あ! いや…だから! なんとなくだ、なんとなく……」
(なんとなくと言われてもな)
自分の発想……または失言が、きまり悪かったのか、
「とにかく! 里に《
本物かどうかもわからなかったんだけど、オレたちに
それで、石を会わせてみようってことになったんだ」
すでに、
「シナは反対したんだ。
それこそ《禁じ手》だって。危険なことで、なにが出るか、なにが起きるかもわからない。
ずっと南の、あるかも
後で聞いたら、その場にいた人が
現実、どうなのか知らないけど、食べてないって。本人(だって子)が言ってた。
それに別に、里を守ってるわけでもなかった。って、
それぞれに守備する武術集団、集まりがあって、自分の意思、考えで血族……家族と里のみんなを守って(い)て、助けあって、あまり上も下もそんなにない感じの集まりで…(
隠す理由もなければ、思いをそのままに話しているのだろう。
語るアレンの表情には、そのおり、そのおりの感情に応じた変化があった。
「事故が起きた場所も、もっと
とにかく、
それなのに
〝鬼婆は
《ひひら》は遠いのに、その話が事実かも、存在するのかさえわからなかったのに、誰が
なにが出るか、起きるかわからないから、自分たちは里で待つことにして、森の奧……《
その黒目がちな瞳が、縁側の右手にひろがる庭を伏せ目がちに映している。とても、口惜しそうに。
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