枯れかけた木に花は咲くか.5
「
せかせか動いていた頃よりも、いまは、あたりまえの
環境が変わったのもあるのだろうが……。
――前より柔軟に……よけいな
この子たちのおかげもあるのだろう……」
つと、それとなしに流された彼の視線を受けとめたヴァイオラが、にっこり、微笑みで
あっちを見、こっちを見していたアレンは、そのとき、
「解放された心地なのに、できることが少ないのは
時にはそれも、どうでもよく感じられたりしてな……(体は存在し、変貌し、不自由ですらあるのに、生まれ変われたような……個という枠から開放された気さえして……)。
どんなに
そこに魅せられる部分があれば、学びたいと思う。
いたらない部分を見れば解き、ほぐせたらとも……。
若さや
――世の中は、知りたいこと、知らないこと、知りたくないこと…。思うようにならないことであふれているが……。
こうして
…ないかも知れないが……。
それが自分で望んだほどのものにならなかったとしても……その程度のめぐり合わせというだけのことだ。
ただ、生きている限りは、そうなれるよう生きたい。
この世界の一部として、そう
そうするなかに、しっかり、車椅子の青年の
なにを考えているのか――伏せられがちなその瞳は、無感動な
「身勝手な自己満足……なのだろうな。
わたしは、そんなに強くもないから、ひとりになって
わたしは……あのような形で終わらなかっただけでも
…ただ、いま……こうして、目覚めていられるうちはな……」
青年のいわんとすることは、それですべてだったのか…。
不明ななかにも五、六秒ほど沈黙が続くと、しびれをきらしたセレグレーシュが、もう待てないとばかりに歩を踏みだした。
いつかしら、腕を
セレグレーシュの足は、これと見定めた
〔用は済んだか?〕
特異な発色をみせる双眸に、けっして
〔聞きたいことがある〕
「おいっ」
現場の流れに自分の用件が後まわしにされそうな、ともすれば忘れられていそうな不穏をみたアレンが声をあげた。
セレグレーシュに追いすがり、再度、その右腕をとる。
「待て。約束だ。シナを診て! ちゃんとだ」
「オレは治せるなんて、言ってないし、約束もしていない。なにかしようにも、その石が邪魔をする…。
けど、彼の生体を…(意識を…)その
(どうにか
言葉も
「《家》に相談しろよ。
もしかしたら、石の効果を
(残っている部分の大半は、
たとえ、薄情さを指摘され、そしられようとも、できないものはできないのだ。
そんなことよりセレグレーシュには、なにがなんでも
〔
相手が逃げようと思えば逃げられてしまうことが明らかでも、彼としては、どうしても、それを……。
この機会を逃がしたくなかったのだ。
〔
〔いいよ。場所を変えよう〕
ふたりが屋外へ
親しい二者の前を
ずっと立ったまま、事の成り行きをうかがっていたその講師は、いまも対面のソファとテーブルの間に
「あいつ、誰?」
「あいつとは?」
「あの後から来た目の色、変わりそうなやつ」
「
「あー…(そう)だな」
そこで、どすんと。アレンがソファに腰を沈めたので、ソファの
震動はあっても、それなりに加減はしたようで、はじめの時のようにソファの骨組みが
「オレ、《
闇から来た
「うん。まぁ…。そうだろうね」
不明を口にするアレンを視界に――遅れて対面のソファに腰を落ちつけたアロウィースが苦笑
「
味方か敵か、善良かどうかなんて、立場が変われば違ってくる。
その人が事実、古くから
血が混ざっていることが明らかでも……これという能力を持たなくても、それと
不安定で危険な存在だろうと協力的でさえあれば、
そこで、すでにここにはいない存在を
「あいつ……強いの?」
「さぁ、どうだろう。君達はどう思う?」
「来たとき物音ひとつ、しなかった(気がする)…――
アロウィースが
その上で、ばっさりと
「ほ(う)っとくに
〝いまこの場で警戒しようと憶測しようと
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