枯れかけた木に花は咲くか.2
「授業はもう始まっているね。せっかくだから、いまはこの子につき合って、執着ををとり
講師の
「オレ、なにもできませんよ?」
セレグレーシュが自己保身から予告するとアレンは、より高い可能性として目をつけている
「彼は、君になにができると(いう考えなんだい)?」
「
「まともに
セレグレーシュは、できるだけ冷静さを
「オレのことじゃないです。でも、彼はオレのこと、そのセレスって人の子供か何かだと思い込んでて……」
「なるほど」
思案がちにうなずいたアロウィースが、ふたりを
「
《
まぁ、彼らは――闇人はもとより、
(
「でも……。ぜんぜん似ないわけじゃぁないだろう? 子供・子孫とか兄弟で、顔とか色が似てたら、それだけ可能性はある。できないとも限らない!」
「うん。素養が同じでも、
日頃の
ところで彼は、そのセレスという子によく似ているのかい?」
疑問を投げ返されたアレンが、にわかに
「あ…。オレ、顔は知らないし。でも、《ルス・カのセレス》なら……もしかするかもって…」
「ルス・カ…の、セレスかい…。《ひひらの》じゃなかったかな?」
「だから、ルス・カのは、きっと、《ひひらのセレス》の子供かなにかなんだ。
頭……髪の色が、ほとんどそのままで……似てて、赤っぽい目で。セレスが死んだ騒ぎで、ルス・カのトンボが連れてきたって……。
もう立ち歩きできたっていうから、赤ん坊とは言わないのかも知れないけど……とにかく!
知らない子だったら、十七、八のガキが〝自分で育てる〟なんて
気に入って同情したとしても、猫や犬の
トンボは《闇人》でも《
もしかしたら《ひひらのセレス》に頼まれたのかも知れないからな!
トンボは《セレス》に恩があったって…。だから関係があるかも!
できるかも知れないんだ」
必死に
「まぁ、とにかく中へ入りなさい」
いずれにせよ、いささか薄っぺらな客人対応のようでもある表情で、ふたりを室内へと
ひとりは渋々。
もうひとりは、これと目をつけた少年が動くのをしっかり視界に
あけ
「それで……。君は《ひひらのセレス》には、相談しなかったのかい?」
「頼みたくても頼めないよ。《ひひら》のは、もう居なかった。死んでいたんだ。聞いた話だけど、シナがこんなふうになるより前のことらしくて……。
頼みようがない。
《ひひら》にセレスの子だって
アレンは、これと思う事実を想起するなかに、聞き手の理解をうながした。
「《ひひらのセレス》が死んだのは、このセレスが赤ん坊……ひとつかそこいらの時のことなんだ。わかるだろ?」
「《ひひら》というのは、土地の名か……なにかの社号、暗号、
「里! (の
たしか《んめ》とか《ねむ》とか《しゅろ》とか。二〇くらいあるって言ってたかな……。
(正確な)数までおぼえてないけど(
葉がトゲトゲのヒイラギがいっぱいあった!」
「それは、どんな存在で構成された里なんだい?」
「どうって…」
「多難な土地に人里を築くには、それなりの背景、力が必要とされるだろう。君のような亜人の集落かい?」
「あぁ、
講師が言わんとしていることを理解したアレンが、思案がちに疑問に答える。
「……。オレの里と似たようなレベル(
多少は(
《ひひら》には、
それっぽいのもいたけど、でも、ほとんど人間だって。
闇人とか亜人が
アレンの受け答えは、やはり、
「でも、やっぱ……。たぶん、《
そのへんにいても
馴染めなかったり、性質に問題あるやつ、妖威みたいなやつは別で…。必ず
あんたの言うように
「うん。そうも言えると思うよ。すべては流動的で、独自の性質を備えている。
深い海にも底や
のろのろと足を進める
セレグレーシュは、浮かない表情でふたりのやり取りに耳を
なんとなしに歩を刻んでいる彼のその特徴的な瞳が、ソファの
(…え? 生きてる……。なんで?)
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