第33話 デート

「いやー、まさかお前がまさかグレイブ様を主に選ぶとはな。失礼のないように気を付けるんだぞ」

「ふふ、もちろんだとも。私と主の相性はいいからね。もんだいはないさ」



 剣の先生とベロニカが仲良さそうに話しているのを俺は胃がキリキリとしながら聞いていた。相性とかいうんじゃねえよ。まじで余計な子というなよ。ベロニカ!!

 そう思うのも無理はない。だってこの二人は……



「グレイブ様は素晴らしいお方だ。俺はこの方ならばこの領地をよりよくしてくれると思っているんだよ。剣の鍛錬はかかさず、加護に目覚めても過信しない。そして、不治の病におかされていたドロシー様を救ったんだくらいなんだ。我が娘ながら、見る目があるな」

「ふふ、実はね、お父様……私も主に救われたんだよ。その時の雄姿を見て仕えるのはこの人しかいないって確信したのさ」



 そう俺の剣の先生とベロニカは親子だったのである。確かにアテナ騎士団の娘がいるとは言ってたよ。だけどベロニカとは思わないじゃん。

 つまり俺は自分の恩師の娘にビキニアーマーを着せたり、雌犬とののしっていたわけである。万が一にでもばれたら色々とやばい気がする。というか俺が逆の立場だったら殺してるわ!



「なあ、ベロニカ……そろそろ行くぞ」

「ああ、そうだね。せっかくだ。たくさん一緒にいたいからね」



 一刻もはやくこの場にいなくなったので余計なことを言う前にせかすように彼女の腕をひっぱる。



「お、グレイブ様どこかにいかれるのですか?」

「ああ、ちょっと……」

「うん、主に女にしてもらいに行くのさ!!」

「は……?」



 意気揚々ととんでもないことをいうベロニカを引っ張りながら俺は叫ぶように答える。



「単に買い物に行くだけだろうが!!」

「ふふ、デートってやつだよね。楽しみだなぁ」


 

 混乱している先生が正気に戻る前に俺は慌ててベロニカを引っ張る。こいつがいると話がややこしくなるからな……




 なんで彼女とデートすることになったかというと、まああれだ。放置プレイをしたあげく風邪をひかせてしまったお詫びである。

 ナナシやドロシーと一緒に寝た(もちろん性的な意味ではない(涙))次の日の朝に俺を待っていた彼女に珍しく恨めしそうに言われて流石に折れたのである。





 そして、俺はぱっと見、貴族だとはわからない程度に上品な服を身にまとって待ち合わせの噴水に来ていた。いや、だって、ベロニカだぜ。なんかとんでもないことを要求してきそうじゃん……

 そのために万が一にもアンダーテイカー家の名誉が傷つかないようにと身バレ防止しているのだ。



「まだ来ていないか。まあ、待ち合わせの三十分まえだしな……」



 デートっぽいということでわざわざ別々に屋敷を出たのだが、スマホもないので合流するのは結構大変な気がしてきた。

 あたりを見回してもレースのふんだんにあしらわれたドレスを身にまとって、綺麗に化粧をしている日傘をさしたスタイルの良い女性がいるだけだ。

 すらりとした長身でありながら豊かすぎる胸元に思わず視線が送ってしまいそうになるのでそらす。その数分後だった。

 先ほどの女性が、なぜか少し不満そうにこちらへやってくるのだった。


 やっべえ、胸をみていたのがばれたか……?


 あわてて言い訳をしようとした時だった。不満そうにしている彼女の言葉に俺は驚きを隠せない。



「主よ、流石に無視は私でも傷つくよ」

「は? ベロニカか?」



 気づかなかったのも無理はないだろう。彼女の私服はみたことはないがこんなドレスを着るなんて想像もつかなかったし……髪型もいつもとは違う。それに化粧をすれば女性の顔は変わるとは聞くが、いつものすっぴんとは全然雰囲気が違うのだ。

 いつもの彼女は凛々しいのだが今の彼女は……



「確かに放置プレイもまた一興だよ。だけど、私も今日は色々とがんばって……」

「悪い。無茶苦茶かわいくて気づかなかった……」

「え……? その……ありがとう……」



 思わず本音をもらすとベロニカは珍しく顔を真っ赤にして……じぶんの手で覆うのだった。

 あれ。ベロニカに俺が萌えてるだと……?









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