第12話 いざパーティーへ

 我がアンダーテイカー領から馬車を飛ばし三時間ほどたったところに、パーティー会場であるキチーク男爵の屋敷はある。

 彼は名前の通り女好きな上に賄賂や魔物や奴隷をうったりと違法な商売で金を稼いだりと悪い噂の絶えない男だ。ゲームでは邪神の力を借りて高身長女性のみを集めた高身長ハーレムを作っており、グレイブを顎で使っていたのである。


 とはいえだ、ドロシーが行くのを止めなかったのには理由がある。さすがのこいつも貴族令嬢に手を出すほど馬鹿ではないし、隣に座る小柄でスレンダーな美少女ドロシーを見て思う。

 こいつはキチークの性癖の対象外だからな……



「ふふ、楽しみだなぁ」



 そんなところに、俺がわざわざについていくことにしたのは二つある。一つはもちろん爆乳騎士と出会うためである。今から胸が高鳴ってしょうがない。

 甲冑からのぞく谷間の何ともエロいことか……ゲームで見たアテナ騎士団の制服を思い出して思わず笑みがこぼれる。

 そして、もう一つはキチークが稼いでいるであろう金を奪い、あいつが持っている邪教とのネットワークを利用するのである。ゲームで得ている知識と父に雇ってもらった盗賊ギルドの仲間がいれば楽勝である。

 

 あはは、お前の悪事で稼いだ金と力は俺の爆乳ハーレムのために使ってやるよ。



「お兄様どうしたんですか? 変な声を出して……」

「ああ、ちょっと考え事をしててな……」

「なるほど……確かにお兄様の夢を叶えるには色々と考えることが大事ですからね、さすがです!!」

「あ、ああ……ありがとう」



 ドロシーの弾んだ声に思わず冷や汗が垂れる。こいつ俺が爆乳ハーレムをつくろうとしていることに勘付いているわけじゃないよな? 

 何かと勘違いしているのだとは思うが、万が一ばれたら無茶苦茶説教されそうである。

 


「それで……お兄様はこのパーティーでどんなことをされるつもりなのですか? 私もお手伝いしたいです」

「え、それはだな……」



 尊敬の念のこもった目で俺を見つめるドロシーに、興味あるのは女騎士の胸と裏金ですとは言えずに言葉を探す。こいつは鋭いから嘘をついたらばれそうでこわい。

 


「貴族様たち……到着したよ……」



 馬車が止まり俺たちの護衛を兼ねている御者の声が聞こえた。感情の籠っていない平坦な声が特徴的である。



「ドロシー、早く降りるぞ」

「あ、お兄様……ありがとうございます」



 そして、俺は救いの手がやってきたとばかりに、馬車から降りる。もちろん、ドロシーの手を握るのも忘れない。

 はたから見れば仲の良い兄弟に見えたであろう。そして、俺は降りるときに護衛に声をかける。



「例の件は頼んだぞ。俺が合図したら始めてくれ」

「理解……任せて……」



 頷いたのは顔を隠すかのように、帽子を深めに被り前髪でをおろしている小柄で平坦な胸の無表情な少女だ。声からして俺と同じくらいの年齢だろう。そして、彼女はただの護衛ではない。

 我が父と懇意にしている盗賊ギルドの人間である。あきらかに非合法の組織だが、悪役領主なだけあってそういう人脈もある父に頼んで力を貸してもらったのである。


 ふははははは、俺は悪役貴族だからなぁ!! 爆乳ハーレムのためなら手段は選ばないんだよ。だけど、あきらかに俺好み(爆乳)じゃないんだけど!! どちらかというとドロシー系の体型じゃない? 



「お義兄様……今のはただモノではありませんね。いったい何を考えてらっしゃるのですか……?」

「ふふ、俺もただダンスを踊りに来たわけではないってことだよ」

「なるほど……さすがです。お兄様もやはり同じことを思っていらしたのですね」



 観察力の鋭いドロシーは俺の言葉に何かを納得したかのように頷いた。いったい何をわかったんだろうな? まあいいか……

 そうして、パーティー会場へと向かっていると俺は一人の女騎士が目に入る。きりっとした顔立ちに、長身な美少女だ。

 そして何よりも特徴的なのは特注であろう胸当てに包まれた大きな胸部である。



「あれは……ベロニカじゃないか!!」



 俺はあこがれのネームドキャラの登場に興奮を隠せない。ゲームでも思っていたが、このおっぱいで騎士は無理ですよ、思わず心の中でつっこみをいれるのだった。


☆☆



 ドロシーが今回貴族のパーティーに出たがったのは、綺麗なドレスを着て社交の場に出たかった……では、もちろんない。

 こういうパーティーに出る目的は一般的には人脈作りと、異性としてのパートナー探しである。だが、ドロシーの目的は両方とも違う。確かにグレイブの力になるための人脈は欲しかったが、異性としてのパートナーは彼女の中で勝手に決まっているし、ダンスとはいえ彼以外の異性に触られるのは反吐がでるほどいやである。ならば彼女の目的は……



「お兄さまの夢のため悪党の情報を得ようとしたのですが……流石です。私と同じ考えだったのですね」



 キチーク男爵の悪い噂は屋敷にいるドロシーにも聞こえていた。なにやら、民衆に重税を課した上に、わいろや違法な商売でかなりの金を稼いでいるようだ。

 正義感の高い兄ならばいつか敵対するのだろうと情報を得るつもりだったのだが、流石というべきか、すでに手は打っているようである。



「例の件は頼んだぞ。俺が合図したら始めてくれ」

「理解……任せて……」


 

 兄が命じると言葉少なにうなづくあきらかにただものではない少女を見て兄への尊敬の念を感じると共にすべてを知っているであろう彼女とのやりとりに嫉妬心が芽生えるのを感じる。

 


「お義兄様……今のはただモノではありませんね。いったい何を……?」

「ふふ、俺もただダンスを踊りに来たわけではないってことだよ」

「なるほど……さすがです。お兄様もやはり同じことをおもっていらしたのですね」



 少女の正体はわからない。だが、今の会話でわかってしまった。おそらく、彼女は兄が正義を執行するための部下なのだろう。



「私はお兄様の……救世主様の力になれるならなんでもするのに……悪党を全員魔法で倒せば認めてくれるでしょうか?」



 可愛らしくないこと言いながら可愛らしくほほを膨らませ、なぜ自分にをってくれないのかと思ってしまうのが悔しいと思いつつ兄についていくのだった。

 この勘違いがグレイブの計画にどう影響を受けるかは……いまはまだわからない。




グレイブ君は爆乳騎士と仲良くなれるのか?


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それではまた明日の更新で


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