第13話 ベロニカという女騎士

ベロニカ=パラスはアテナ騎士団の副団長である。凛々しい顔立ちにすらりとした長身、そして、エロゲにありがちななぜか谷間をさらしている鎧からのぞくおっぱいはナルヴィに勝るとも劣らない存在感を感じさせる。

 ゲームでは主人公の仲間にはならないものの、圧倒的な力をもってして、サポートしてくれた強キャラである。特に不利な状況になればなるほどつよくなり、逆転するその姿から『逆転の騎士』などとよばれており、人気キャラクターの一人だ。

 そして……今回俺が狙っているターゲットでもある。

 

 前世でも攻略キャラではなかったためにエッチなシーンのない凛々しい騎士である彼女といちゃラブセックスをどれだけのぞんだことだろうか?



「失礼ですが、招待状をみせてもらえますか?」

「はい、二人分です。どうぞ」



 ベロニカは俺から受け取った招待状を見て、名前をチェックしている。目の前の彼女はキチーク男爵の悪事を暴くために潜入捜査のようなものをしているのだ。

 残念ながらその作戦は失敗し、彼女は囚われての身になるのだが、そこを助けるのである。ようは敵につかまっているベロニカを助け恩を売るのである。

 そうすれば強力な力と強大なおっぱいを持っている彼女の信頼が手に入る。まさしく一石二鳥である。



「なるほど……貴公がグレイブ=アンダーテイカー殿ですか、お噂は聞いていますよ」

「え……?」



 彼女がにこりと笑う。いったい何を知っているというのだろうか? 正直グレイブは悪役領主の息子程度でしかない。我儘なクソガキとしての悪評しかないというのに……あ、まさか、余計なことをするなっている牽制か? 俺が混乱している時だった。

 怒鳴り声ともに乾いた音が中庭に響く。



「貴様!! 使用人風情が、私の服を汚したな!! どれだけの値段をすると思っているのだ」

「申し訳ありません……ですが、あなた様が私にぶつかってきって……」



 メイドが貴族のおっさんの服にお茶でもこぼしたのだろう。濡れた礼服のおっさんがいかりながら頬を抑えている使用人を睨みつけている。

 周りは……眉をひそめつつも関わり合いたくないようにして目をそらしている。貴族と平民の間ではこれが常識だからだ。たとえ理不尽でも、ここで平民をかばえば面倒なことになる。だからこそ、俺が転生する前のグレイブの使用人たちへのひどい態度も皆に注意されることはなかったのだ。

 だから、これは日常だと割り切ればいい。そう思ったが、一部の使用人たちがつらそうな顔をしているのが目に入る。



「お義兄様……」

「助けるに決まっているだろ」



 裾を引張って何かを言おうとするドロシーに重ねるようにして答える。これから行うことを考えれば、目立たないように放置することしたほうがいいのだがそうもいかない。

 なぜなら、叩かれた彼女は……巨乳だからだ。



「おい……あんた……」

「申し訳ありません、今日はお祝いの場なのです。女性に手を上げるような真似はやめていただきたい」



 俺がうごくよりも先にベロニカが動いていた。彼女は使用人の手を取り起き上がらせると、そのままおっさんとの間に入る。



「なんだ貴様は……騎士ごときが私に意見するのか?」

「騎士ごときですか……ですが、その騎士の仕事はここで無用な戦いを防ぐことなのです。わかっていただきたいものですね」

「なっ……」



 怒鳴り声にかけらも動揺せずに、淡々と答えるベロニカに貴族のおっさんが冷や汗を流してあとずさる。



「ご主人様こいつ生意気ですね、やりますか? 俺がわからせてやりますよ」



 貴族のおっさんの護衛の騎士なのだろう。ガタイの大きい男がいやらしい顔でベロニカを嘗め回すように見ながら剣に手を置く。明らかな熟練の戦士と言った風格である。

 さすがに殺傷沙汰し、まずいよな……と仲裁しようと思った時だった。



 ぞくりと背中に冷たいものが流れる。それは俗にいう殺気というものだったのだろう。俺の脳裏に一瞬だが、死ぬというビジョンがちらついた。


 その発生源は……ベロニカだった。



「それを抜けば私も本気を出さざるおえないがいいのかな?」

「ひぃ……」



 にこりと笑っているがベロニカから放たれるプレッシャーは圧倒的だった。貴族のおっさんが気絶し、護衛の騎士が担いで逃げだしていく。



 わからされてんの、お前らじゃねーか。



 すげえな、さすがはゲームの強キャラである。彼女を味方にさえすれば、万が一俺が童貞を失い、力をうしなっても守ってくれるのではないか?

 そう思った時だった。彼女がぼそりと何かをつぶやいたのが耳に入ってしまい思わず、彼女を凝視してしまうが……



「皆さまお騒がせいたしました。お客様は気分が悪くなって帰られるそうです。それではもう少しでパーティーが始まりますので、お楽しみください」



 すました笑顔を浮かべて、ベロニカが再び警備に戻ってしまい、貴族令嬢たちからはキャーーと黄色い悲鳴があがった。



「私たちも行きましょう。お義兄様も助けにいこうとしてくださって……かっこよかったです」

「ああ……そうだな……」



 顔を赤らめて手を引くドロシーに引っ張られながら、俺はベロニカの後姿をみつめていた。うざい貴族を追い払う姿は確かにかっこよかった。だけどさ、確かに俺は聞いていたのだ。



「ああ……さっきの嘗め回すような視線……よかった……」



 と恍惚の表情でベロニカがつぶやいていたのを……









やっぱりファンタジーときたら女騎士だぜ!



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それではまた明日の更新で




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