第14話 パーティー開始

 パーティーということで着飾った貴族やその使用人たちが楽しそうに交流していた。そんななか壁際で俺がしているのは高そうな飯とワインを飲んで女の子ウォッチングである。

 元々グレイブの評判は悪いから敬遠されているのだ。それなのに誰かに声をかけろって? 前世陰キャ童貞な俺にそんなことできるわけないだろ!!



「だけど、改めてわかったぜ」



 やっぱりエロゲの世界でもナルヴィやベロニカがすごいんだな……とドレスからのぞく貴族令嬢たちの谷間を見てそう思うとともに爆乳ハーレムには必ずや二人は必要だと改めて理解するのだった。



「ん? なんだ?」



 会場の全体からなにやらざわりという声があがる。見ると青いドレスに身にまとったドロシーがなにやらきょろきょとしているのが見えた。

 


「おーい、ドロシー」



 貴族の男に話しかけられている彼女だったが、こちらを見つめると満面の笑みをうかべてやってくる。軽くあしらわれた男がこちらを睨んでくるのがちょっと怖い。

 あいつロリコンだな……



「お義兄様どうでしょうか……?」



 上目遣いに俺を見つめるドロシーは確かに可愛らしい。これでおっぱいさえあれば……だけど、モテる本に書いてあったが、女の子がおしゃれをしている時はとりあえずほめるか気づいたことを言えというのを思い出す。



「ああ、そのドレス似合っているぞ。それに俺の瞳と同じ色でなんかいいな」

「え……ありがとうございます」



 顔を真っ赤にしたドロシーが照れ隠しでもするように俺の肩にかおをうずめてくる。甘い匂いがするが、残念ながらナルヴィの時とは違って柔らかい感触はなくむしろちょっと骨が当たって痛い。



「いきなり甘えてきて、どうしたんだ?」

「お義兄さま……私もお義兄様のお力になれるように頑張りますね!!」



 そんな風に話している間にも何人かの貴族がこちらに視線をおくっているのがわかる。

 その視線は俺……ではない、ドロシーである。見目美しい彼女は男だけでなく女性との注目をあびるようだ。そして、俺は思い出す。パーティーの本来の目的は情報取集や人脈作りだ。

 なついてくれている彼女は情けなくきょろきょろとしていた俺を助けようとしてくれるのだろう。俺とは違ってうまくやってくれそうである。



「ああ、ドロシーには期待しているぞ」

「はい……お兄様くすぐったいです」



 兄思いのドロシーの頭をなでてやると嬉しそうに、だけどちょっと恥ずかしがりながらも笑顔を浮かべる。そんな俺たちに一人の人間が近づいてくる。



「これはこれは僕のパーティーにアンダーテイカー家の令嬢がいらしてくれるとはありがたき幸せです。今は可愛らしいですが数年後はもっと長身に成長し美しくなられるでしょうね」



 厭らしい笑顔を浮かべてやってきたのはこのパーティーの主催であるキチークである。身長は150くらいだろうか、小柄な青年である。ちなみにこいつが見ているのは俺ではないドロシーだけである。

 まあ、わかるよ。男よりもかわいい女の子の方がきになるもんな。だけど、ドロシーはおっぱいも身長も成長しないんだよな。

 うんうんと適当に聞き流して、うなづいていたがドロシーは違った様だ。



「お招きありがとうございます。ですが、先に挨拶すべき相手がいるのではないでしょうか?」

「ああ、グレイブ殿もよろしくお願いします」



 ドロシーの言葉に仕方なくと言った感じでキチークが挨拶をしてくる。

 その態度からあきらかに歓迎していないのがわかる。まあ、そんなことはどうでもいい。俺もこいつにはかけらも興味ないしね。


 それよりも、さっさとベロニカを捕らえてくれないかな? 俺ははやく彼女を助けてイチャイチャしたいんだよ。



 そう思っていたが、可愛い妹は違う意見だったようだ。



「不敬ですね、お義兄様……殺しますか?」



 感情のない声が耳元から聞こえてきた。中庭でのベロニカ以上に殺気がこもっている気がする。

 


「いや、今は時ではない泳がせておけ」

「わかりました。今は……ですね」



 こわいこわい。何言ってんのドロシー……。

 俺が止めなかったら魔法を放ってたな。一瞬魔力の揺らぎを感じたのは気のせいではないだろう。キチークにはこれからやってもらうことがあるのだ。まだ死んでもらっては困る。

 たった今命拾いしたキチークはあわてて駆け寄ってきた部下からなにか囁かれると嗜虐的な笑みを浮かべた。



「おっと、どうやらネズミが現れたようです。僕はこれで失礼します」



 そう言うと厭味ったらしくお辞儀をしてさっていく。ようやく物語が進んだようだ。



「ドロシー、俺はちょっとトイレにいってくる。しばらく戻ってこないけど好きにやっていてくれ」

「なるほど。好きにですね。わかりました……任せてください。お兄様」



 やたら気合の入っているドロシーの返事を聞きながら、俺は盗賊ギルドの少女に合図してから、キチークの後をつけてパーティー会場をあとにする。

 陰キャ童貞の俺とは違ってドロシーならば適当に世間話をして貴族たちとなかよくしてくれるだろうから、貴族としての最低限のノルマは達成してくれるだろう。



☆☆



「この格好はなかなか疲れますね……それと……お義兄様は気づいてくれるでしょうか?」



 鏡を前にグレイスの瞳と同じ青いドレスに着替えたドロシーは緊張しながら、自分の姿を確認する。相手の瞳と同じ色のドレスを身に着けてパーティーに参加するという事は、その人への好意を示すものだ。

 グレイブに女性としても実力でも認めてほしいドロシーは今回のアピールチャンスを逃すつもりはなかった。 

 彼女がパーティー会場に入るとざわりと人の視線を感じる。だが、そんなものはどうでもよかった。彼女が見てほしい人間はただ一人である。



「おーい、ドロシー」


 

 壁側でワインを片手にしているグレイブが目に入った。なぜ誰かと話さずあんなところに……あれではまるでパーティーに馴染めていないように見える。

 だけど、すぐに愚かな考えを振り払う。あそこは周囲を一望できる参加者を見張るにはちょうどいい場所なのだ。



 流石ですお義兄さま……いつでも警戒心は解かれないのですね……



「お嬢さん、よかったらこの後私とダンスを……」

「申し訳ありません、人と約束がありますので……」



 声を掛けてきた男を適当にあしらって兄の元へと向かう。身なりからおそらくそれなりに身分の良い男なのだろうがどうでもよかった。

 はしたないと思うがグレイブがこのドレスを見てどんな反応を返してくれるか楽しみで我慢できずに小走りでむかって感想を聞いてしまう。



「お義兄様どうでしょうか……?」

「ああ、そのドレス似合っているぞ。それに俺の瞳と色でなんかいいな」

「え……」



 グレイブの言葉で顔が熱くなっていくのがわかる。だって、グレイブはちゃんとドレスを着てきた意味をわかったと言ってくれているのだ。

 嬉しさのあまり抱き着いてしまう。



「お義兄さま……私もお義兄様のお力になれるように頑張りますね!!」

「ああ、ドロシーには期待しているぞ」

「はい……お義兄様くすぐったいです」



 グレイブが頭を撫でてくれるというのも嬉しいがそれ以上に、期待してくれているというのが嬉しい。そしてグレイブの考えを理解した。賢い彼のことだ。私がここに来た目的もわかっているのだろう。そして、自分の考えを読んでサポートしろということなのだ。


 かならずや、お義兄様の役に立って見せますからね!! そう誓った直後に、キーチクがやってきて、お義兄様を侮辱した時は殺してやろうかと思ったが、なんとか耐えた。



「いや、今は時ではない泳がせておけ」

「わかりました。今は……ですね」



 グレイブの言う通りである。すべての悪事を暴いた後にお兄様を侮辱したことを後悔いさせてやればいいのである。手足を徐々に凍らせながら彼を侮辱したことを悔いさせるか、燃やすのどちらが良いだろうか?

 それはともかく、しばらくは泳がさないと……


 そして、グレイブが盗賊ギルドの少女の少しあとにパーティー会場を出ていく。



「きっとお義兄様の作戦が始まったのですね……」



 怪しまれないように貴族令嬢たちと話していると、盗賊ギルトの少女が再び戻ってきて何かを確認するように、パーティー会場を見回すと再び出て行ったので追いかけることにする。

 ただ、ひとつ不思議だったのは盗賊ギルドの少女の胸がやたらとおおきくなっていたことだった。







なぜ少女のおっぱいは大きくなったのか……? また、グレイブの作戦は何なのか?



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それではまた明日の更新で


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