第19話 VSキチーク

「どうだ、僕が邪神様からいただいたお香の効果は? これは男にはマヒを……女のには発情効果を与えるのさ!! 邪神様の加護がある僕は影響を受けないけどねぇ!!」

「くっ、なんて卑怯な男なんだ……。こんな辱めを受けるなんて……♡」

「そんなエロゲみたいなお香があんのかよ……いや、エロゲだったわ……」



 キチークの言う通り体がどんどんしびれていき、体がふらふらとしてくる。俺と同時に横のベロニカが切なそうに声をあげている。

 まるで感度3000倍って感じである。



「こんなことをしてどうなるって言うんだ、どうせ、追手がやって来るぞ」

「はははは、そうだ。お前の言う通りどうせ、僕はもう破滅だ!! だったら、せめて、そこの女騎士を辱めてから死んでやるのさ!!」

「なんていう卑劣な男だ!! そんな姿を皆に見られたら私は騎士としても女としても終わってしま……んんっ♡!?」



 下劣な笑みを浮かべるキチークにベロニカが悲鳴? をあげる。不可視の結界の中でエッチなことをされれば周りからは丸見えである。やってきた援軍がその光景を見ればどんな風になるかは想像にたやすい。さすがエロゲの敵役である。やることが凌辱物みたいだぜ。

 徐々に重くなっていく体をなんとかおこしている俺が冷や汗を流していると、ベロニカがこっそりとささやく。



「ふふ……どうやら、君の命は大丈夫そうだね、よかったよ。騎士として、君のような将来有望な人間を守れて本望だ」

「ベロニカ……?」



 先ほどまでの痴態はどこにいったやら真っ赤に上気してはいるものの、凛々しい顔でほほ笑んだ。その姿は人に安心感を抱かせとってもかっこよいけれど、一つのことに気づく。



「お前……こわいのか?」



 そう、彼女は震えていたのだ。先ほどまでの歓喜の色は薄れており自虐的に笑う。



「ふふ、笑うがいいさ……敵兵やゴブリン、オークに凌辱されたり、罵倒される妄想をするのは好きだけどね……実際は異性にろくに触れたこともないからね、ちょっと怖いんだよ……」



 思えば最初につかまっていたときもベロニカは兵士たちと一定の距離をとっていた。それに彼女の実力だったら、キチークとその護衛だって倒せたという余裕があったからだろう。

 ようはプレイを楽しんでいたのである。だけど、今回は違う。発情状態の彼女はまともに戦えないし、セックスしないとこの結界は解けないのだ。

 俺は彼女に何か言おうとして、体を支えることができずに倒れる。



「はっはっは、そろそろお香がまわってきたころだろ? それに観客もきたようだよぉぉぉ!!」

「お義兄様、大丈夫ですか!!」

「グレイブ……援護に来た……」

「ベロニカ様!! ご無事ですか」



 どたどたという足音ともにキチークを追いかけてきた騎士やドロシーたちがやってきてしまったようだ。その中には人質となった女騎士もいる。

 知らない人間に見られるよりもベロニカにとってはつらいことになるだろう。



「僕はねぇぇぇぇ、僕をチビって馬鹿にしていた高身長な女が悔しそうな顔するのだが大好きなんだよぉぉ。そのために邪教を信仰して力を得たんだ!! さあ、女騎士様の痴態をみんなに見てもらおうか!! なに、すぐに気持ちよくなるさ」



 勝利を確信したキチークが狂ったように笑いながらエロ同人のようなことを言ってこちらへとやってくる。



「まあ、気にしないでよ。私はこんな性癖だからね……どうせ、まともな恋愛はできなかったさ。なに、これもプレイの一環だよ……んんっ♡」

「ベロニカ……」



 あきらかに強がっているがベロニカは最後に笑って……快楽に勝てずに、体勢をくずすとそのまま倒れている俺に覆いかぶさる。



「これは……おっぱい……」



 そして、ビキニアーマーに守られた谷間が俺の顔を包む。豊かすぎるおっぱいの柔らかい感触が、あきらめかけた俺に力を与えてくれる。



 このままでいいのか? 



 俺は爆乳ハーレムの主になると決めたのだ。ならばハーレムの一員にしようとしているベロニカが傷つけられて黙っていいのか? いいはずがないよなぁ。

 胸が熱くなり、負けてたまるかという気持ちが強くなる。考えろ、考えろ、俺の力はなんのためにある? 俺は何のために加護を得た? そうだ。爆乳ハーレムをつくり、童貞を捨てるためにあるんだ。



『喜べ!! 貴様の強い意志により我が新たな加護を得る資格を得たぞ! 貴様ならば使いこなせるはずだ!! くっそ、おっぱいうらやましい……』



 へファイトスの言葉が脳に響くと、不思議なくらい頭がクリアになっていく。そして、一つの作戦が浮かんだ。



「はは、高身長の女はみんな僕に凌辱されるためにいるんだよ。あの婚約者め、僕をちびって言いやがって!! しかも、僕の息子まで『ゴブリンよりちっさ』って鼻で笑ったんだ。絶対許せない!! そして、女たちに復讐するちからをあのお方は……テュポーン様はあたえてくださったんだ!!」



 何やら悲しい過去をキチークが語っているが、気にはしていられない。俺の全妄想力を使わせてもらおう。できるかはわからない、だけど、今やらなければいけないんだ。



「勝手にあきらめんなよ、ベロニカ!! 変態だけど十分お前(のおっぱい)は魅力的だぜ!! だから、お前は俺のものになれ。そして、主は部下を守るものなんだよ!!」

「グレイブ……いったい何を……?」



 精神力を絞りつくして一体のミスリルでできた人型のゴーレムが現れる。あいにく経験がなく、女性の裸をろくに見たことがないから爆乳ゴーレムは作れなかった。だが……



「んんっ♡……これはまさか……」

「お義兄様の形をしたゴーレム!?」

「でも……ちょっとイケメンになってる……」



 そう、俺が作り出したのは前世から妄想の時の竿役となっていた理想の俺!! である。顔だけはグレイブになっているがイメージは問題ない。

 童貞の性への渇望をなめていただいては困る。

 


「なんだこいつは……? まさか、このゴーレムで僕を襲うつもりか!! 僕を殺してもこの結界は解けないぞ。それともまさか、そのゴーレムが女騎士を襲うのか?」

「違うぞ、言ったはずだ。ベロニカ(のおっぱい)は俺のものだと!!こいつが襲うのは……お前だ!! お前にも穴はあるんだよぉぉぉぉ!!」

「なん……だと……? ひぃぃぃぃぃ!!」



 俺の言葉に顔を真っ青にするキチーク。こいつは結界やお香がなければそこまで脅威ではないからな。逃げようにも自分で作った結界に阻まれてあっさりとゴーレムにつかまってみぐるみをはがされる。



「おい、ちょっと待て。何を言って……あ……? あっー!!」

「あれが義兄さまのものなんですね、凛々しい……それにしても男の人同士……なんかテンション上がりますね」

「なんと、荒々しいんだ。私もいつかあんな風に……んんっ♡」

「身体的にサイズがおかしい……多分盛ってる」



 ナナシめ、やかましいな!! 多少は美化するものだろう!! そして、しばらく、キチークの悲鳴が結界内にひびきわたるのだった。

 何をやったか、詳しいことは省略させていただく。





 結界がはがれて、ようやく俺たちのほうへとドロシーとナナシがやってくる。お香も霧散したのか、徐々にだが体も動くようになってきたようだ。



「お兄様、ご無事で何よりです」

「グレイブ……邪神の信者を倒すなんてすごい……」

「ああ、ありがとう」



 二人の顔を見て安心感を感じて気が楽になった。だけど、このままでは終われないな。キチークの派閥にはほかにも邪神の信者はいるはずだ。リストを入手して報奨金をたくさんゲットし爆乳ハーレムを作るのである。



「ナナシ、悪いが他にも何か悪事の痕跡がないかかキチークの部屋を見てきてくれないか?」

「了解……グレイブはこんなめにあったのに……偉いね」

「私もご一緒しましょう。ベロニカ様はここでおやすみください」



 ナナシと女騎士が部屋から出ていく。そして、肝心のキチークは気絶したまま俺のゴーレムに運ばれて騎士たちが囲んでいる。これならばもう、あいつも抵抗できないだろう。

 そして、歩こうとすると……金属の冷たい感触と共にむにゅっと柔らかいものが胸板におしつけられる。



「ベロニカ?」

「一人ではつらいだろう? 助けてもらったんだ。これくらいはさせてくれると嬉しいな」



 柔らかい胸の感触ににやりとしていると、ベロニカが俺にだけ聞こえるようにささやく。



「それで……私を君のものにするっていってくれたけど、あれは本気と思っていいのかな? ふふ、あんなに人がいるところで告白とは情熱的だね。たぎってしまうじゃないか」



 やっべえ……またやらかしてしまった。だけどこのメス顔だとまんざらでもないよな? おせばいけるんじゃないだろうか?

 童貞を失ったら俺は加護を失うのだ。性癖に問題はあるが、強力な戦闘力と巨大なおっぱいを持っている彼女が仲間になれば心強すぎる。



「ああ、本気だ。俺はお前(の力とおっぱい)が欲しい」

「んんっ……また、獣みたいな目で私の胸をみてぇ……♡」

「女騎士さん……お義兄様にくっつきすぎです!! 結界魔法……私も覚えるべきですね。そうすればずっと二人っきりに……」



 甘い声を出すベロニカをほほを膨らましたドロシーが引きはがす。なぜか瞳にはハイライトがなくちょっと怖い。

 結界魔法をなんに使うつもりなんだろうな?



 すべてがひと段落したと一息ついた時だった。圧倒的なプレッシャーを感じるとともに、天から声がふってきた。



『まさか、我が計画がこんなにも早く邪魔されるとはな……貴様……未来を変えたな?』



「あれはなんだ……? みんな気を付けて!!」



 俺とドロシーをかばうように前にして前に出たベロニカが視線を追うと、先ほど捕らえられたばかりのキチークの周りに魔力のオーラが嵐のようにあふれ出して、やつを囲んでいた騎士たちが吹き飛ばされ、キチークをかついでいた俺のゴーレムも砕け散る。



『愚者どもよ、頭を垂れよ。我の名はティポーン。貴様らが邪神とよぶものである』



 その一言で、俺たちは不可視の力によって地面に押し付けられる。なんて力だよ……その力の前ではベロニカですら、抗えないらしく、悶えている。

 それも無理はないだろう、だって、こいつはラスボスなのだから……




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