第27話 VS異界の調停者

「二人ともこれを飲んでおいてくれ。状態異常を防止する薬だ」

 


 拠点への扉に入る前に二人にナルヴィからもらったポーションを渡す。



「先ほどの化け物以外にもこの中に何があるのですか?」

「おそらくだが、キチークの時のようなお香がまかれている可能性がある」

「あれか……あれは、動きがにぶくなるから嫌いなんだよね……」



 この前の戦いを思い出したのか、ベロニカが眉をひそめる。自分の力が発揮できないピンチは苦手なようだ。まあ、気持ちわかるよ。

 爆乳メスガキにののしられるのも二次元ならいいが実際だとやられたら多分むかつくしな。



「いくぞ!!」

「ふふ、出会いが違えば君を味わいたかったよ……はぁ!!」

「氷よ、わが怨敵を凍てつかせよ!!」



 扉を開けると同時に襲い掛かって来る触手をベロニカがこまぎれに切り裂き、本体をドロシーの魔法が一瞬で凍結させる。

 あれ、俺いらなくない? 出番は扉をあけるだけだったんだけど……



「これは……」

「ひどいありさまですね……」

「うわぁ♡」



 扉の先に広がっているのはこの世の光景とは思えない状況だった。中に一歩踏み込むだけで、むわっとお香の匂いが鼻を刺激し、触手の化け物に絡み取られるようにして、嬌声をあげている先ほどの女盗賊(貧)や、壁尻状態になっている女盗賊(巨尻)がエロミミックにぺろぺろとされている。



 まさに、エロゲのワンシーンだな……



 とりあえず触手の化け物を切り裂いて、女盗賊を助けてやる。



「大丈夫か?」

「ああ……ありがとう……こわいけどきもちよかった……♡」


 

 解放された彼女は涙で顔をぐしゃぐしゃにして、俺に抱き着いてきた。せっかくのラッキースケベイベントなのだが、当然ながら胸の柔らかい感触もなく、触手の粘液か何かがついてるせいかねばーっとしていてちょっと嫌な気分になる。

 しかも、彼女の瞳はとろんとしており、何か切なそうに自分の下半身を触っている。

 


 この女!! 発情してやがる!!



 ちょっとエロイなと思っていると、ドロシーが割って入るようにして女盗賊(貧)をかかえる。



「お兄様……あまり女性と接触するのは良くないと思いますよ」

「ああ、そうだな……」



 ジトーーとした目でにらむドロシーにちょっとビビりながら女盗賊(貧)を外に避難させる。ちなみにベロニカはというと……



「ふふ、随分といやらしいスライムに、ミミックじゃないか、だけど、我が主の獣のような視線と鬼畜な攻め方に比べればまだまだだね!!」



 壁尻スライムを物理で破壊し、ミミックを剣で一刀両断して、女盗賊(巨尻)を助けていた。まさか、触手以外は彼女の性癖にはささらなかったのだろうか?

 てか、俺を変態みたいに言うのやめてくれないかな? ただ爆乳を愛しているだけであってSではないというのに……

 助けた二人を外に避難させて俺たちは先に進む。



「無事でいてくれよ、ナナシ……」



 あいつは俺のハーレムの一員になってもらうんだよ。触手やミミックなんぞにエッチなことをさせてたまるかよ!!

 あ、でも、あの爆乳が触手に絡まれているのはちょっとエロイな……



「さすがはお兄様です。ナナシさんのことを心から心配しているのですね」

「いーや、私にはわかるよ。主のあの獣のような目はエッチなことを考えている目だね」

「ベロニカさん、お兄様がそんな変態なはずがないでしょう? まだまだですね」

「ふふ、そういうことにしておこうかな。まあいいさ、主よ、先頭は私に任せてほしいな」



 ベロニカの言葉をやんわりとドロシーがやんわりと注意すると、彼女は意味ありげに俺に向かってほほ笑む。

 ドロシーごめん、ベロニカのが正しいです。


 そして、先に進むと……

 


「ああ、主よ……不可視の壁に挟まってしまった!! このふがいない騎士を叱ってくれ♡」



 あきらかに、スライムの方へと向かい壁尻状態になったベロニカは、何かを期待するかのように大きいおしりをフリフリとしながらねだるような声をあげる。

 


 うおおおお。リアル壁尻だ!! しかも、不可視だからか、壁に挟まった向こう側にある胸もぶるんぶるんと揺れているのがよく見える。



 ここは天国かな?



 思わずニヤリとしていると、隣から殺気のようなものを感じたかと思うと、ベロニカごと壁尻スライムが凍てついていく。



「スライムなら凍らせば一撃ですね。それとお兄様……目がいやらしいですよ。今は敵とたたかっているんです。気を抜かない方がよいかと……」

「はい、すいません……」

「はっはっは、ドロシーちゃんは過激だね。それにしても、氷攻めも悪くないな」



 不満そうに頬を膨らましているドロシーとは対照的に、元気に氷をべりべりと砕きながら、満足そうに笑顔を浮かべているベロニカが這い出てくる。

 マジで身体能力すげえな……多分壁尻も自力で破れたんだろうなぁ……



「ふふ、身動き取れない状態でエッチな目で見られるのも悪くないね。主よ……ああいう風なプレイをしたくなったらいつでも言ってくれ」

「お前な……さっきは普通だったじゃないか?」

「そりゃあね、騎士として目の前の人を助けるのを優先するのは当たり前だろう?



 こいつ無駄に言っている事はかっこいいな!! 普通ならばギャップ萌えなはずなんだが、ギャップがひどすぎる……


 

 しばらく、魔物たちを倒して進むと、何かが争うような音が聞こえてくる。まだ、正気を保っている人間がいたのか!!



「大丈夫か、助けにきたぞ!!」



 その精神力に驚きながらも音のする扉のドアを蹴破るとそこには奥への扉を守るようにして、白衣の女性と対峙しているナナシがいた。息が荒いのは過労のためか、それともお香のせいで発情しているのか……


 何体もの触手を狩ったのだろう。あたりには息絶えている触手の残骸がある。



「グレイブ……やっぱり、来てくれた……」

「おやおや、乱入者かな? まるでヒロインのピンチに駆けつけるヒーローのようだね。実に興味深い。私の名前はイザベラ。六奇人の……」



 そして、白衣の女には見覚えがあった。こいつこそが『異界の調停者』イザベラだ。それならばやることは一つだ。



「ベロニカはイザベラの杖を壊せ、召喚魔法がつかえなくなるはずだ!! ドロシーは魔法で触手どもを凍らせろ!!」



 俺は指示をとばしながらナナシの方へと向かう。そして、ドロシーとベロニカはイザベラを倒すべく構える。魔法使いなどに大事なのは速攻である。詠唱し、召喚させる前に倒せば……と思ったところで、イザベラがにやりと笑って、指をぱちんとならすと地面のあらゆるところが無数の魔方陣となって輝いていく。



「な、これは……先に進めない!?」

「量が多すぎます……これじゃあ……」



 部屋の至る場所に現れたのは所狭しとイザベラを囲むように現れた圧倒的なまでの触手の化け物たちが現れた分断されてしまう。

 しかも、そのうちの一匹はほかの個体よりも大きく触手の数も媚薬の威力も桁違いだ。イザベルの召喚できる最強の触手であり、その圧倒的な力から召喚されたと同時にゲームならばリセットするところだ。

 本来ならばこいつの召喚には時間がかかるはずなのだが……



「ははは、私をそこらの三流の悪党と一緒にしてもらっては困るよ。いつでも援軍が来ても良いように扉が開くと同時に召喚魔法が作動するようにしていたのさ!!」

「くそが……ゲームのようにはうまくいかないってことかよ……」

「ふふ、私の目的はその少女だ。君たちがじゃまをしないというのなら見逃してあげてもいいんだよ?」


 

 予想外の展開に思わず冷や汗を流してしまう。あいにくこれは現実だ。やり直し何てできやしない。心が折れそうになった時だった……ぷにっと柔らかい感触が押し付けられる。



 これは……おっぱい!!



「グレイブ……助けてに来てくれて嬉しい……だけど、危険だよ。私のことは見捨てて……」



 ぎゅーーと爆乳が押し付けられて絶体絶命ピンチだというのに、思わずにやけそうになる。そして、俺は決意を新たにする。



「いやだね!! 言ったろ、おまえ(のおっぱい)は俺のものだってな!!」

「グレイブ……うれしい……」


 

 そう、ナナシは俺の爆乳ハーレムに必ずや、必要な人材なのだからな!!







壁尻っていいよね


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